研究

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生活習慣病の疫学と予防対策の推進

磯 博康(医学系研究科)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

取組要旨

 世界人口の死亡の6割以上を占める生活習慣病は、今や先進国のみならず、中進国・低開発国においても死因のトップを占め、世界的な健康問題である。本教室は、半世紀以上に亘って地域住民を対象とした中年期以降の循環器病の発症要因に関する疫学研究と、自治体との協働による予防対策を行ってきた。健診による高血圧者等のハイリスク者の把握、生活習慣の改善指導、重症化予防のための医療機関への受療勧奨で構成された予防プログラムを計画的に行い、対照自治体と比べて、血圧値や脳卒中の発症率のより大きな低下と医療費の適正化を達成できることを実証した。その成果は、日本の生活習慣病予防の制度・施策に反映されており、WHO本部のHPにおいて高血圧対策の好事例(SDGsの目標03に相当)として紹介されている。この脳卒中の大きな減少は、日本人の平均寿命は世界のトップへと押し上げたが、一方で、少子化超高齢化社会を迎えるに至った。国民のさらなる健康の維持・向上のためには、出生からの予防と高齢者での重症化予防による医療・福祉介護の軽減が必須であり、本教室では環境省の10万人の出生コホートへの参画や高齢者コホート研究の拡大を行い。人生100年時代における健康づくり研究を追及している。

研究成果・インパクト

本教室の研究により、循環器病予防対策を計画的に継続実施した自治体では、医療費の上昇抑制(周辺の地域と比べ国保被保険者1人あたり年間約1万円の医療費抑制)に貢献することが示されている。この結果を全国に外挿すると、全国の市町村国保被保険者(2020年:2,700万人)の年間一人あたり医療費87,000円が、77,000円となれば、総医療費2兆3,000憶円の11%減(2,500憶円の)抑制につながるとされ、医療経済の観点からも社会的インパクトは大きい。生活習慣病の予防は、国民の寿命(健康寿命)の延伸のみならず、医療費の適正化にもつながる。わが国は、国民皆保険(UHC)のもとで世界トップレベルの健康長寿を達成した国であるが、今後、人生100年時代の少子超高齢化社会でどのようにSDGs目標03並びに08を向上し続けるかを世界が注目しており、その成果を示すのが日本の使命の一つと言える。

担当研究者

磯 博康(医学系研究科)

備考

 日本がこの半世紀に世界のトップの健康長寿を達成した背景、文化、制度、社会心理経済要因について社会疫学の観点から科学的エビデンスを総括した著書を、2020年10月にオックスフォード出版より刊行した(Heath in Japan: Social Epidemiology of Japan since the 1964 Tokyo Olympics, edited by Eric Brunner, Cable Noriko and Hiroyasu Iso)。本著書は、SDGs目標達成のため、特に経済発展と高齢化の進展が著しい中進国において、生活習慣病対策を進める上での様々なヒントを与える著書となり得る。

キーワード

生活習慣病予防、高齢化社会、健康づくり

応用分野

ビックデータ、IT活用