研究

最終更新日:

東南アジア大陸部におけるイスラーム受容と社会関係の歴史像構築のための基盤研究(科研基盤B)

池田 一人・村上 忠良・山根 聡・菅原 由美(言語文化研究科)

  • 人文学社会科学系
  • 人文学研究科・文学部・外国語学部

取組要旨

本研究は、近世から現代までの東南アジア大陸部におけるイスラーム受容の変遷と現地社会との関係の歴史的全体像を明らかにし、その史的視野によって当地におけるイスラームの現代的位置付けを再評価することを目的とした歴史研究プロジェクトである。縁辺部のベンガル系・中国系・マレー系・チャム系の4事例、内陸部の諸事例、周辺世界からの移動事例を対象に、史料調査を旨とする歴史学と口承史資料や社会調査に強みがある人類学とが調査段階から協働する。東南アジア大陸部のイスラームは、世界史的にみても稀有な出自の多様性が見られ、個別研究も豊富である。だが、大局観が構築されているというには程遠く、本プロジェクトはこれに道を開く基盤整備研究として実施される。大陸東南アジアでは、内陸の諸コミュニティが共生状態を維持しているにも関わらず、西部と南部縁辺で対立・紛争状況が続く。これはどのレベルでいかなる要素・関係性の変化に起因しているのか、歴史学と人類学が知見と視座を相互補完し協働する共同研究によって、宗教間の軋轢と対立を原因とする現代的諸課題に対するあらたな視座を提供する。

研究成果・インパクト

現代東南アジアではミャンマーのロヒンギャ問題やタイの南部ムスリムとの衝突などの宗教対立がマスコミの耳目を集めるが、その島嶼部ではもちろん大陸部でも古代から周囲の諸イスラーム世界から絶えずムスリムが往来定着し、草の根では依然として受容と共存が日常である。他宗教間の関係性の歴史を大きな視座で捉え直し、これを東南アジア研究者との共同研究によって認識の共有を図り、民族間衝突や不平等を生じさせない、多様性を包摂する視点を考えさせることを、日本及び東南アジアの大学教育の場から発信する。

担当研究者

池田 一人、村上 忠良、山根 聡、菅原 由美(人文学研究科)

キーワード

宗教 紛争 移動 共存

応用分野

歴史学 文化人類学 政治学 地域研究