研究
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マーケット・デザイン
芹澤 成弘(社会経済研究所)
取組要旨
SDGsの目標は全て、なんらかの形で資源の配分・財配分を通じて達成されます。ここで、「資源」とは、狭い意味での自然資源だけではなく、人的資源を含む広い意味です。そして、そのような資源のほとんどは、日々マーケットを通じて配分・財配分が行われています。マーケット・デザインは、SDGsの目標を含め社会的な目標を達成できるように、マーケットをデザインする研究です。既存のマーケットを改良することはもちろん、以前にはなかったマーケットを創設することによって、SDGsの目標に貢献することができます。例えば、二酸化炭素抑制のために排出総量を設定し、排出権を企業に配分するためにオークションをデザインしたり、排出権が状況の変化に応じて効率的に再配分されるように、排出権取引マーケットなどをデザインしたりします。
このようなマーケットの制度設計を理論的に研究し、さらに、その理論を経済実験によって検証することにも取り組んでいます。理論的に優れた性能を持っているオークション方法が、経済実験でその性能を発揮できない場合には、性能を発揮できる工夫も試みています。オークション理論については、従来の研究の多くは一つの商品のみを販売するオークションを対象にしてきました。しかし、排出権のように多くの数量を販売する理論の発展は不十分です。そのために、多くの数量を販売するオークションの研究に取り組んでいます。
研究成果・インパクト
オークションの研究を含むマーケット・デザインの研究は、二酸化炭素抑制の負荷の経済への負担を減らすことによって、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献します。目標07「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のためには、風力発電、太陽光発電などのクリーンなエネルギーを普及さることが重要です。しかし、そのような発電技術は発電量が安定していないために、それに応じて消費量を調整することが必要です。そのために、多くの国は、新しい技術を導入しながら電力市場を改革しています。そのような電力市場改革にも、マーケット・デザイン研究の成果は役立ちます。
担当研究者
芹澤成弘(社会経済研究所)
備考
現在世界的に最も大きな影響力を持つ企業の一つであるGoogleは、インターネット検索結果のWeb広告positionの販売から主な収入を得ています。Googleは、オークション理論で研究されてきたVickreyメカニズムに基づいたオークション方法で、Web広告positionを販売しています。このように、工学的に目覚ましい技術革新を推進している企業の発展にも役立っているという点で、目標09「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも貢献しています
キーワード
オークション
応用分野
経済学