研究

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世界的ヘリウム危機に打ち勝つためのヘリウム循環型社会基盤の形成

郡 英輝(核物理研究センター)、津々美 章子(工学研究科)、鳴海 康雄(理学研究科)、大阪大学低温センター

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取組要旨

世界的にヘリウム危機が続いており、低温生成においてヘリウムの代わりは無く大きな問題となってる。100%輸入に頼る日本においてこの危機が続けば、将来MRI医療診断さえ受けられなくなる可能性が高い。一方、多くの企業ではリサイクルに対する意識が低く、大型研究機関でさえもリサイクル施設を持たずに優先的に手に入れたヘリウムを使用後は大気中へ廃棄している。昨年末、日本物理学会など7つの学会、大阪大学などの28の大学、11の研究所が「ヘリウム危機に関する緊急声明」を発表した。その声明は、(1)ヘリウムをリサイクル使用する。(2)リサイクル環境の整備をする。(3)将来へ向けてヘリウムの備蓄をする、と3つの提言から成っている。本センターでは、本学や他大学の低温センターに協力いただき、関西地域にある研究施設で使用したヘリウムを回収する装置を開発・製作し、回収後に液化して安価で分配するリサイクルの輪を形成していき、企業や病院においても状況・問題点を調査・解決のうえ、その仲間入りを目指していく。そして、早急にこの輪を全国へ広げ、完全なヘリウムのリサイクル社会基盤を形成し、停滞している低温研究を全力で行う事ができるよう推進していく。

研究成果・インパクト

低温生成において、4 Kまで気体状態を保つヘリウムは唯一無二の役割を果たしている。被曝を伴うX線CTやPETと違い、MRIは数々のいのちを救ってきた安全な医療診断装置であるが、ヘリウムが無くなれば運転不可能である。また、超伝導、超流動、核磁気共鳴などの技術革新はヘリウムが生成する低温基盤が有るからこそ起こり得る物であり、ヘリウムが地球から枯渇すれば低温に関係する技術革新は将来起こり得ない。本学が中心となってヘリウム回収装置や回収制度を開発・製作してヘリウム危機に打ち勝ったなら、いのちを守り、産業と技術革新の基盤を守った貢献は社会に対して大きなインパクトを与えると期待できる。

担当研究者

郡 英輝(核物理研究センター)、津々美 章子(工学研究科)、鳴海 康雄(理学研究科)、大阪大学低温センター

キーワード

ヘリウム危機、産業と技術革新の基盤、持続可能な消費と生産

応用分野

低温物理学、磁気共鳴医学