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【開催報告】2024年3月28日(木)、いのち会議 アクションパネル 【経済・雇用・貧困】大阪大学第6回SSIシンポジウム『生きることと働くこと』を開催しました。
■シンポジウム全体の状況(振り返り)
春の温かさが戻った3月28日、第6回SSIシンポジウム『生きることと働くこと』が大阪大学中之島センター(対面会場)とメタバース空間(オンライン会場)とでハイブリッド開催されました。
今回のシンポジウムは、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(以下、SSI)が、世界的な起業家や慈善家をメンバーに有するNGO「Global Sustainability Network(以下、GSN)」と共同で開催したもので、SDGsの達成に向けた経済や社会、まちづくりのあるべき姿を探ることをテーマに、国内外の様々な分野の専門家と参加者が語り合う場として実施されました。
メインの対面会場では、国籍や文化、社会的な立場など多様なバックグラウンドを持つ発表者と参加者が、ジャンルの垣根を超えて活発に意見を交わし合いました。
すべてのいのちが尊重され輝く社会のために、必要なものは何か、何が変わらなければならないか、さまざまな分野の視点を包摂しながら、ある時は俯瞰的に、ある時は個人の生活視点に引き寄せながら続く意見交換は、多くの気づきとともに、グローバルなパートナーシップの実現を垣間見せる温かな交流の場となり、25年の大阪EXPOを先取りした空気が醸成されました。
■シンポジウムスタート
まずはじめに大阪大学SSI長である堂目卓生教授から開催の趣旨説明がなされ今回のシンポジウムがスタートしました。共同開催者であるGSNの概要を紹介した動画の上映に続き、GSN代表のRaza Jafar 氏より、会議全体を貫くメッセージと問題提起がなされました。
■トークセッション
メインとなるトークセッションは、様々な分野の専門家4人がパネリストとして登壇。モデレータである松本文子准教授の進行のもと、それぞれのテーマを語るところからスタートしました。
・Scott Cuninngham 氏 (GSNメンバー、SDGuild設立者)
テクノロジー分野における事業家であり投資家として、新たな技術が社会課題の解決に向かっていくための有効な視点についての解説をされました。
「人間のウェルビーイングのためにAIのような新たなテクノロジーが活かされるためには、人間中心という軸とともに、システムの信頼性とアカウンタビリティの確保、様々な偏見の除去が必要であり、そのためには多様なステークホルダーとのコラボレーションが重要になる」
・木多 道宏 教授
大阪大学 大学院工学研究科 教授/副SSI長/New-POD副部門長
国内外の集落・都市における「地域文脈」を継承した建築・都市デザインの研究家の視点から、アフリカ非正規市街地(スラム地区)の改善などの実践に関する発表がなされました。
「都市や街というコミュニティ全体と、そこに暮らす個々の人間の精神性が相互に関わり合い、空間的社会的なスピリチュアリティが形成され更新され続ける。災害、紛争、貧困などの負の出来事を乗り越えた経験は街やコミュニティの精神構造にも重要。アフリカのスラム居住比率の高い地区で、子どもたちが居住地区を深く知ることで、地域のネットワーク再生や新たな仕事が生まれる実態も、社会課題解決に活かせるのではないか」
・山岡 万里子 氏(ノット・フォー・セール・ジャパン(NFSJ)代表/出版翻訳者)
出版翻訳を通して知った人身取引、現代奴隷問題の啓発のために2011 年に NFSJ を設立するなど、政府・企業・消費者に働きかける活動に取り組んでいる立場から、日本国内で起きている問題が人身取引や人身売買に相当するものであるとの認識が広がっていない現状を解説されました。
「政府の年次報告書によれば、国内における22年の人身取引被害者は46人でほとんどが日本人、かつ18歳未満の児童が33人で7割を占めた。外国人技能実習制度における労働搾取の問題。ホストクラブの売掛金による売春強要などの性的搾取。新たな形の人身取引としての闇バイト問題など、多くの日本人にとって人身取引問題という意識が希薄な問題は多い。また、海外における奴隷労働による生産物の輸入が多い国との海外評価もあり、人権デューデリジェンスの強化も必要だ」
・Irene Gampel 氏(GSNメンバー、基金設立者)
ウクライナに生まれ、11歳でイスラエル移住し、渡米後のビジネス分野での成功を経て、世界で最も弱い立場にある人々のニーズに取組む基金を設立した国際人の立場から、慈善活動および社会課題解決への思いを語ってもらった。
「ニカラグアのトイレ状況改善のプロジェクトから慈善活動の道を歩みだした。世界に蔓延する問題による痛みを和らげ、少しでも綺麗にしたかった。でも、ひとつのトイレ、ひとりの痛みを和らげるだけでは到底足りない。『誰も取り残さない』という、すべてのいのちを包括したスピリッチュアリティが重要。それが、人間をモノのように扱う不正に抗う勇気を生み、連携を広げ団結できる。そうして現代奴隷制を根絶し、ディーセント・ワークを世界で実現させたい」
■質疑応答・ディスカッションを経て
4名のパネラーのプレゼンテーションを踏まえ、対面会場の参加者からの質問に登壇者が応えるかたちでディスカッションのパートが始まりました。
Raza Jafar氏が、フレンドリーで闊達な意見交換の場になるよう会場全体をリードしていく中、次第に参加者全体による有機的なディスカッションであり、国際的な意見交換の場へと移行していきました。異なる背景を持った人々が、SDGsゴールの達成のために必要なものは何かという、本シンポジウムのテーマを多様な視点から考え直す時間となっただけでなく、特に教育というテーマの重要性が多数語られました。
それら、あらゆるテーマに言及した議論を経て、堂目教授より、本シンポジウムのまとめとして、いのち会議が捉える「共助社会」の構造(“いのちを支える側のいのちも支えられる構造”)に関する解説を、参加者全員で共有し、盛会となったシンポジウムを閉会しました。