研究 (Research)

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各種眼疾患の病態形成における慢性炎症の関与の解明と新規治療法の創出

眼免疫再生医学共同研究講座

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))
  • 共同研究講座 (Joint Research Chair)

取組要旨

高齢化に伴い動脈硬化疾患などの加齢性疾病が増加傾向にあるなかで、これら疾患の病態形成・進展などに慢性的な炎症が深く関わっていることが報告されている。本講座は、慢性炎症を基軸とした種々の眼疾患の病態解明により、新たな診断法と治療薬の創出を目指した研究を行っている。特に、眼球は視覚器として神経細胞を含む多種の細胞群が空間的に厳密な配向性を示す組織であることから、ヒト組織を採取して解析することが困難である。そこで我々はヒト組織解析の代替となる手法を検討し、これまでに慢性炎症を背景とするMALTリンパ腫患者の結膜から特有の細菌叢を同定し、診断に有用なマーカーとなりうることを証明した。また、常染色体優性遺伝性疾患である無虹彩症において独自に患者体細胞より疾患特異的iPS細胞を樹立し、ヒトモデルの作製および解析から発症メカニズムの解明を行っている。さらに糖尿病網膜症でみられる血管異常を示すモデルマウスの開発に成功し、治療標的の探索向けた取り組みを開始している。

研究成果・インパクト

五感の中で視覚は外界からの情報の80%を受け取り、まさに人の生活の質(QOL=Quality Of Life)に直結する感覚である。独自の動物モデルやiPS細胞分化誘導技術を用いる本研究の推進は、糖尿病網膜症や無虹彩症など進行性に視覚が障害される眼疾患に対して、これまでとは異なる病態を明らかにすることが期待される。解明した新規メカニズムに基づくバイオマーカーの同定、治療薬の創出から、従来の治療では効果不十分のため視覚を脅かされ、QOLを著しく損なうことを余儀なくされてきた患者の健康的な生活を「まもる」ことができると期待される。

担当研究者

西田幸二主任教授、川﨑諭特任准教授、福嶋葉子特任講師、浦島博樹所長、大本浩嗣共同研究員、山下大輔共同研究員大塚製薬株式会社・先端創薬研究所)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
西田 幸二
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2020/specialite_001_2/

キーワード

眼細菌叢、オートファジー、疾患特異的iPS細胞、糖尿病網膜症

応用分野

眼疾患に対する新規バイオマーカーを利用した診断、新規創薬標的分子を用いた眼疾患治療薬の創出