研究 (Research)
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安心安全な社会のためのミリ波MIMOレーダセンシング技術
取組要旨
ミリ波は高い指向性を有し、衣服や紙、樹脂、塗料などの光が透過しない材料も透過するため、目視では点検不可能な衣服の下に隠された凶器や、梱包された荷物中の危険物、道路や建物の表層付近の内部欠陥などを非破壊・非接触で検査することが可能である。また合成開口レーダ(SAR)信号処理技術を使えば1mm程度の高い空間分解能で2Dおよび3D画像再構成イメージングを行うことも可能である。このため、セキュリティや社会インフラの非破壊検査などの分野をはじめとしてミリ波レーダ技術が注目されている。また短距離(数10cm)から長距離(~200m)までの幅広い範囲で検知・分離が可能であるため、地形の変化など自然災害による防災目的のための監視ツールとしても関心が集められている。
車載用ミリ波レーダは既に実用化されているが、セキュリティ検査やインフラ整備、さらには環境保全などで活用できる汎用のミリ波レーダの開発はなされていない。
そこで、我々が持つミリ波MIMO(多入力・多出力)-SARイメージング技術を使って低価格かつ高精度なアクティブ型のミリ波イメージングシステムの開発を行う。この技術要素として、①79GHz帯(帯域幅4GHz)のシングルチップMIMOレーダを使ったミリ波イメージングシステムの構築、②得られたデータを最適なアルゴリズムを用いて処理することにより高速な2Dおよび3D画像再構成技術の開発を行う。
研究成果・インパクト
安価で性能の高いミリ波MIMOイメージングシステムが開発され、国内外のセキュリティ強化を目指す企業や商業施設、さらには公共交通機関などに数多く導入されることで、いのちの安全を脅かす様々な脅威から人々を守り、平和で住み続けられるまちづくりに大いに貢献できる。
また人々の命を脅かすこのコロナ禍では、ミリ波 MIMOレーダ の 0.1 mm 程度の距離測定精度を活かしたバイタルセンシング技術への応用が考えられる。具体的には、ミリ波が衣服や布団を透過するため、 ICU 病棟のベッドで横たわった重症患者の体表面の微小な変異の測定を行うことで、心拍数や呼吸数の検知さらには位置検知などが可能である。
このように今回提案するミリ波レーダシステムの開発は、我が国の安心安全な社会の構築に向けて 大きく 貢献するものである。
担当研究者
村上博成
備考
近年、我が国においては、地震をはじめ気候変動による記録的大雨が齎す洪水被害や土砂災害などの自然災害が多発しており、その防災に向けた取り組みが緊急課題となっている。このような防災システムの構築において、ミリ波レーダーは雨、雪、霧などの環境下でも200メートル程離れた対象物の変位や形状変化に関する信号を正確に捉えることが可能である。また光と違って、夜間や明るさが急激に変化する状況においてもノイズレスで測定対象物を正確に監視することが可能であり、上記自然災害の防災に向けた有力な監視ツールとなり得る。
キーワード
ミリ波、イメージング、非破壊
応用分野
セキュリティ、医療、防災、交通監視システム、インフラ整備