研究 (Research)

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加水分解酵素を活用する次世代型ものづくり化学 (Next-generation synthetic chemistry using hydrolytic enzymes)

教授 赤井 周司(薬学研究科 薬品製造化学) AKAI Shuji(Graduate School of Pharmaceutical Sciences)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 薬学研究科・薬学部 (Graduate School of Pharmaceutical Sciences, School of Pharmaceutical Sciences)

特徴・独自性

我々は20年余り、脂質の加水分解酵素リパーゼを用いて、医薬品などの光学活性(キラル)な有機化合物をフラスコ内で効率的に合成する方法を開発してきた。従来、有機合成反応への酵素の利用は限定的であったが、独自に作成した遷移金属触媒と酵素を混合して利用することで、この限界を打破することに成功した。本法は動的速度論的光学分割法と呼ばれ、合成容易なラセミ体のアルコールや軸不斉化合物を片方の鏡像異性体に100%で変換できる(図1)。さらに、この方法は、多段階の反応を一つのフラスコ内で連続進行させるワンポット合成法や、上記混合触媒を充填した反応管を用いるフロー合成法にも応用できることを実証した。これらの手法は、廃棄物の削減、高い原子利用効率、安全で簡便な化学物質変換を可能にする。

図1.酵素と金属触媒が協働する動的速度論的光学分割法

研究の先に見据えるビジョン

有機合成化学は、医農薬や機能性材料など様々な有用物質を生み出し、今日の豊かな生活の基盤を築いてきた。昨今では、持続可能な社会構築に資する、環境にやさしい化学合成法(図2)の創生が求められている。常温常圧で極めて高い選択性と触媒効率を示し、発酵で生産され、分解されて自然に帰る再生可能な酵素と、多彩な機能を創出できる人工の金属触媒という異質な領域の融合によって、社会の要請に応えうる「次世代型ものづくり化学」の世界が拡がる。

図2.環境にやさしい化学合成法(Clark, J. H. Green Chem. 1999を一部改変)

担当研究者

教授 赤井 周司(薬学研究科 薬品製造化学)

キーワード

加水分解酵素/光学活性(キラル)化合物/環境低負荷/有機合成化学

応用分野

創薬/農薬/機能性化学物質

参考URL

https://handai-seizo.jp/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。