研究

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前がん細胞の拡大から花の形の多様性にいたる生命の理を数理モデルから予測する

准教授 藤本 仰一(理学研究科 生物科学専攻)

  • 理工情報系
  • 理学研究科・理学部

特徴・独自性

私達は、一見大きく異なる現象の背後に共通する数理を探しています。例えば、根の先端の輪郭が多くの生物種で共通して、橋などの建築物に見られるカテナリー曲線と一致することを明らかにしました(上図)。また、石鹸の泡や細胞が共通して示す多角形の形に注目し、腫瘍の元となる前がん細胞が多細胞の組織内で拡大する仕組みを研究しています。その仕組みを数理モデルから予測し、生きたショウジョウバエの上皮組織のライブ観察を通じて検証してきました。その結果、前がん細胞が、周囲の正常細胞との隣接関係を変化させることで、選択的に面積を拡大することを発見しました(中図)。また、花びらの枚数は、ランなど単子葉類の多くの種は3、アブラナやサクラなど双子葉類の多くは4や5です。加えて、花びらの配置も種ごとに多様です。私達は、花の発生過程の数理モデリングを通じて、花びらの数と配置の多様性を生み出す遺伝子による制御の仕組みを予測しています(下図)。さらに、花の発生の数理モデルを、イソギンチャクやクラゲの発生に応用して、動物が多様な形を生み出す仕組みを調べています。

研究の先に見据えるビジョン

今後も、生命の進化や病気の背後に共通する数理を、数理モデルを通じて予測し、実験を通じて検証を進めます。また、多細胞組織が適切に機能するためにカギとなる条件は、小規模な農林水産業が持続する条件に類似すると、私達は感じています。生命と数理の融合研究を、多様な生物資源と社会が共存する産業の持続性へ役立てたいです。

担当研究者

准教授 藤本 仰一(理学研究科 生物科学専攻)

キーワード

多様性/進化/かたちづくり/数理モデル/ネットワーク

応用分野

医療・ヘルスケア/園芸

参考URL

https://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/~fujimoto/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。