研究

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百日咳の症状に対応した発症予防法・原因療法の開発

教授 堀口 安彦(微生物病研究所 分子細菌学分野)

  • 医歯薬生命系
  • 微生物病研究所

特徴・独自性

百日咳は百日咳菌の感染によって起こる呼吸器系の伝染性疾患である。本症は基本的にワクチンによって予防できるが、一旦発症すると咳発作、気管支肺炎、肺高血圧症、脳症などの症状を呈して患者を苦しめる。マクロライド系の抗生剤が本症の第一選択薬として処方されるが、菌の排除後も続く諸症状の発症機序は不明で、これらを緩和する治療方法は確立していない。当研究室では百日咳の諸症状の発症機序の理解を目指して、本菌の感染成立機序を解析している。その結果、百日咳脳症の発症に本菌の壊死毒が強く関与する可能性を示すことができた。さらに、βラクタム剤の使用が壊死毒の遊離を促進するリスクファクターに成り得ることを示した。この成果により、壊死毒の作用を抑えることにより、百日咳患者の脳症を予防・治療する可能性が拓かれた。

研究研究の先に見据えるビジョン

長年にわたって、細菌感染症への対処には細菌を殺滅する抗生剤が使用されてきた。その反面、細菌感染で見られる諸症状の発症機序ヘの理解は乏しく、症状の緩和・回復を目指した原因療法はほとんど試されていない。さらに近年の薬剤耐性菌の出現の問題が重なり、対細菌感染症医療の状況が悪化することが懸念されている。当研究室のプロジェクトは、百日咳に限らぬ種々の細菌感染症の成立機序の基盤知見を収集し、それぞれの個別対処法の開発を目指している。

担当研究者

教授 堀口 安彦(微生物病研究所 分子細菌学分野)

キーワード

細菌感染症/百日咳/脳症

応用分野

医療/創薬

参考URL

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200324_2
https://bactox1.biken.osaka-u.ac.jp

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。