研究

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水和カリウム超イオン伝導体の開発

准教授 吉成 信人(理学研究科 化学専攻)

  • 理工情報系
  • 理学研究科・理学部

特徴・独自性

カリウムイオン(K+)は、資源が豊富で低コスト化ができることから、ナトリウムイオン(Na+)とともに、リチウムイオン(Li+)に代わる電池材料として注目されています。しかしながら、K+イオンは、比較的イオン半径が大きく原子量が大きいため、Li+イオンやNa+イオンに比べて結晶中の運動性が低く、電池構築の鍵となる高いイオン伝導率を示すカリウムイオン伝導体の開発が課題とされてきました。我々の研究グループでは、大きな負電荷とナノメートルサイズのイオン半径をもつアニオン性金属錯体を多数の結晶水とともに導入したイオン結晶(K6[Rh4Zn4(L cys)12O]·nH2O)を合成し、室温でのK+イオン伝導率が.3×10-2 S/cmに達することを見出しました。この値は、0.01 M KCl水溶液の伝導率に匹敵し、水和カリウムイオンが伝導種となる超イオン伝導体の初めての例です。同時に、Na+イオンやLi+イオンを含む類似のイオン結晶についても伝導率の調査を行い、通常のアルカリ金属イオン伝導体とは異なり、イオン伝導率がLi+<Na+<K+の順に増加することも明らかにしました。

研究の先に見据えるビジョン

今後、この発見により、安全で廉価、かつ高湿度下でも動作可能な全固体カリウム二次電池の開発が期待されます。また、大質量のK+イオンの運動に基づく大きな熱電効果や、水和金属イオンの輸送特性に基づく新しい固体内化学反応への展開も期待されます。

担当研究者

准教授 吉成 信人(理学研究科 化学専攻)

キーワード

イオン性固体/金属錯体/超イオン伝導体/カリウム

応用分野

ナノテクノロジー・材料/ライフサイエンス/全固体電池、熱電変換素子、イオン交換体

参考URL

http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/konno/index.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。