研究 (Research)
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セマフォリンは鼻ポリープ形成を誘導する鍵分子~難治性ちくのう症の新たな診断と治療のターゲット~ (Semaphorin4D is a key molecule inducing nasal polyp formation – a new diagnostic and therapeutic target for refractory rhinosinusitis)
教授 熊ノ郷 淳、助教 西出 真之(医学系研究科 呼吸器・免疫内科学) KUMANOGOH Atsushi, NISHIDE Masayuki(Graduate School of Medicine)
特徴・独自性
好酸球性副鼻腔炎は鼻ポリープを高い確率で合併し、手術やステロイド投与による既存の治療法では、一度治療した後の再発率が高く、正確な病態の理解に基づいた、安全かつ効果的な治療方法が求められています。
大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学、耳鼻咽喉科・頭頚部外科学の共同研究グループは、好酸球上に発現しているセマフォリン4D(SEMA4D)が、好酸球の活性化に伴って細胞から遊離し、血管の内皮細胞や鼻腔の上皮細胞に働きかけ、血管や上皮の結合を緩めて好酸球を通り抜けやすくすることが、アレルギー反応を悪化させ、鼻ポリープの形成に関与していることを解明しました。
さらに、SEMA4Dは、炎症を引き起こす様々な分子(サイトカイン)を上皮から分泌させることもわかりました。
実際の患者さんにおいても、SEMA4Dの血中濃度は好酸球性副鼻腔炎の重症度と相関しており、SEMA4D濃度が高い患者さんはこの病気が重症かつ難治性であることが分かりました。
さらに、SEMA4Dを中和する抗体を用いると、動物モデルにおいて好酸球性副鼻腔炎が著明に軽快することを見出したことから、今後の診断や治療に役立つことが大いに期待されます。
研究の先に見据えるビジョン
血清の遊離型SEMA4D濃度は、好酸球性副鼻腔炎の病勢を反映するマーカーとして有用であり、好酸球由来のSEMA4Dはアレルギー炎症を増悪させる因子として、好酸球性副鼻腔炎における新たな治療ターゲットとなることが考えられます。
担当研究者
教授 熊ノ郷 淳、助教 西出 真之(医学系研究科 呼吸器・免疫内科学)
※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
熊ノ郷 淳
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2021/nl84_mimiyori_vol7/
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2015/201506_01/
キーワード
好酸球性副鼻腔炎/鼻ポリープ/セマフォリン/抗体治療
応用分野
医療・ヘルスケア/創薬
参考URL
https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(19)32598-9/fulltext