研究 (Research)

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Metabolic Tumor Volume (MTV)を用いた食道癌の新たな治療効果・予後予測法の開発 (Development of a new method for predicting treatment response and prognosis in oesophageal cancer using Metabolic Tumor Volume (MTV))

助教 牧野 知紀(医学系研究科 消化器外科学)、教授 土岐 祐一郎(医学系研究科 消化器外科学) MAKINO Tomoki , DOKI Yuichiro(Graduate School of Medicine)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))

特徴・独自性

食道癌治療では術前化学療法(NAC)が標準であるが、その抗腫瘍効果の程度が術後の生存や再発リスクに直結するため、個別化医療の確立には術前に予め画像で治療効果を正確に判定することが不可欠である。FDG-PET検査ではSUV( Standardized uptake value)maxという指標が現在頻用されるが、領域内1点での計測のため腫瘍全体を反映せず治療効果判定の精度には限界があった。Metabolic Tumor Volume (MTV)は腫瘍体積と代謝活性を同時に測定するPET/CT検査の新たな体積指標で、ある一定以上のSUV値を示す領域全体の体積で生物学的活性を加味した腫瘍体積(単位ml)を表す(図1)。今回、NAC後に手術を施行した遠隔転移のない食道癌患者を対象としてNAC前後でPET/CT検査を施行し、SUVmaxとMTV の両者をソフトウェア(SYNAPSE VINCENT®FJIFILM)により測定したところ、NAC前後でMTV減少率が大きい(60%以上)ケースは小さい(60%未満)ケースと比較して明らかに術後の生存率が良好であった。これは既存のSUVmaxやCTを用いた判定法と比べてより正確で有用であったことから(図2A,B)、食道癌個別化治療確立へのブレークスルーとなる可能性がある。

研究の先に見据えるビジョン

MTV測定により術前に「治療効果なし」と判定したケースには別の化学療法や放射線療法、免疫療法を追加してから手術を行うなど、個々の患者に最適な個別化治療が可能となり治療成績の向上につながる(図3)。また今回の知見は食道がんに限らず他がんにも応用できる内容であり、今後はAI (artifi cial intelligence)技術の応用などによりMTV測定の自動計測、自動診断を行うなど、テクノロジー領域とのコラボレーションでよりよい医療の提供へとつながる可能性がある。

担当研究者

助教 牧野 知紀(医学系研究科 消化器外科学)、教授 土岐 祐一郎(医学系研究科 消化器外科学)

キーワード

食道癌/化学療法/FDG-PET/metabolic tumor volume (MTV)

応用分野

医療・ヘルスケア/AI

参考URL

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2018/20181226_1
http://www.qlifepro.com/news/20190107/esophageal-cancer-mtv.html
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/release/19/01/09/06628/
https://www.m3.com/clinical/news/651629

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。