研究 (Research)
最終更新日:
食中毒菌の毒素分泌クロストークによる病原性発揮メカニズムの解析 (Virulence mechanism mediated by the cross-talk secretion of a toxin produced by a foodborne bacterial pathogen)
准教授 松田 重輝(微生物病研究所 細菌感染分野) MATSUDA Shigeaki(Research Institute for Microbial Diseases)
特徴・独自性
食中毒は世界保健機関の推計によると年間6億人以上が罹患しているが、その原因の大半は細菌などの病原微生物である。本研究グループは、代表的な食中毒菌であり日本で発見された腸炎ビブリオをモデルとして、「食中毒菌がいかにして病気をおこすのか」という命題の分子メカニズムの理解を目指している。一般に病原細菌の代表的な病原因子として、菌体から射出されたのち宿主細胞に作用する“外毒素(毒素)”とⅢ型分泌装置のような注射針様の分泌装置によって宿主細胞内に直接注入されて作用する“エフェクター”が挙げられる。本研究は腸炎ビブリオの外毒素であるTDHがⅢ型分泌装置に輸送されエフェクターとしても作用することで下痢症状を誘導することを見出した。従来の常識では「外毒素はⅢ型分泌装置で輸送されない」とされてきたが、TDHの一部が本来の輸送経路からⅢ型分泌装置に“混線”するような形でエフェクターとして輸送されるメカニズムを明らかにし、病原細菌の新たな病原性発揮メカニズムとして毒素の「分泌クロストーク(混線)」という概念を提唱している。
研究の先に見据えるビジョン
本研究で提唱する分泌クロストーク現象を鍵として、病原細菌の病原性発揮メカニズムの解明とその制御法の開発への展開を図っている。また毒素以外のタンパク質の潜在的な機能の探索など、細菌研究をつうじて未知の “生命現象”の発掘を模索している。
担当研究者
准教授 松田 重輝(微生物病研究所 細菌感染分野)
キーワード
病原細菌/毒素/タンパク質分泌
応用分野
医療・ヘルスケア/創薬
参考URL
http://bacinf.biken.osaka-u.ac.jp/
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2019/124