研究 (Research)

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細胞キラリティ~細胞の利き手の謎を探る~ (Cellular Chirality – Exploring the Mystery of Cell Handedness)

教授 松野 健治、講師 稲木 美紀子(理学研究科 生物科学専攻) MATSUNO Kenji, INAKI Mikiko(Graduate School of Science)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 理学研究科・理学部 (Graduate School of Science, School of Science)

特徴・独自性

キラリティとは、3次元の物体や現象が、その鏡像と重ならない性質のことである。キラリティは、化学や物理学において、物質の性質を理解する上で有用な概念であった。細胞の構成成分であるタンパク質や糖はキラリティを示すが、細胞レベルのキラリティについては、最近まであまり考慮されてこなかった。我々は、生体内の細胞が、形態や細胞内動態にキラリティを示すことを世界に先駆けて示し、これを細胞キラリティと命名した。その後、多くの研究グループの成果によって、細胞キラリティは、ヒト培養細胞から細胞性粘菌にいたるまで進化的に保存された、真核細胞に普遍的な性質であることが明らかになった。動物のからだは、その構造や機能に左右非対称性を示すことが多く、これは、正常な胚発生の必須要素である。我々は、細胞キラリティが、からだの左右非対称性の形成を誘発することを世界で初めて示した。

研究の先に見据えるビジョン

ヒト細胞においても、細胞内の構造やその動態などに明瞭な細胞キラリティが認められる。しかし、現在のところ、細胞キラリティの異常と疾患の関連は報告されていない。一方、平面内細胞極性、頂端基底極性などの細胞極性の異常は、多くの疾患の原因である。細胞キラリティも、細胞極性の一種であることから、細胞キラリティの異常と疾患の関連については、今後明らかにされるものと予測している。現在の我々の研究は、これらの疾患の治療法の開発において、鍵を握ることになると考えている。

担当研究者

教授 松野 健治、講師 稲木 美紀子(理学研究科 生物科学専攻)

キーワード

キラリティ/細胞キラリティ/細胞極性/左右非対称性

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬

参考URL

https://doi.org/10.7554/eLife.32506
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/matsuno/index.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。