研究

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光で燃料電池を調べる

准教授 永井 正也(基礎工学研究科 物質創成専攻)

  • 理工情報系
  • 基礎工学研究科・基礎工学部

特徴・独自性

固体酸化物燃料電池の固体電解質の中で、電荷担体となる酸素イオンが10兆分の1秒の時間でイオン移動の試行を繰り返した後に酸素空孔に移動する様子を観測しました。イオン伝導体中の酸素イオンは、隣接サイトに移動する直前にその試行運動が遅くなることが知られています。そこで、近年、大容量短距離無線通信や非接触非破壊検査技術として注目されているテラヘルツ周波数帯の電磁波を用いてこの運動を追跡しました。この手法は物質科学の標準的手法であり、安定化ジルコニア中の酸素イオンの運動を実時間で捉えることに成功しました。このような電荷担体のふるまいは数値計算で予想されているものの、固体電解質で一般に行われている実験手法では得られない情報です。

図1: 固体電解質内でイオンが移動する様子

研究の先に見据えるビジョン

燃料電池などの化学-電気変換デバイスの研究開発では、これまで化学的アプローチでの研究が主流でした。本研究では伝導イオンを実時間で直接追跡するという物性物理学で標準的な手法を適用することで、固体電解質の基礎特性を評価する新しいツールとなることを示しました。本研究手法を取り入れることで、高い発電性能が期待される次世代のプロトン伝導性酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池の固体電解質や電極材料の探索の加速が期待されます。

図2: 固体電解質中のイオンの移動のしやすさの測定例

担当研究者

准教授 永井 正也(基礎工学研究科 物質創成専攻)

キーワード

固体電解質/イオン伝導/テラヘルツ

応用分野

燃料電池/全固体電池

参考URL

https://www.laser.mp.es.osaka-u.ac.jp/index.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。