研究

最終更新日:

骨配向化用医療材料の開発

教授 中野 貴由、准教授 松垣 あいら(工学研究科 マテリアル生産科学専攻)

  • 理工情報系
  • 工学研究科・工学部

特徴・独自性

骨本来の配向化構造(コラーゲン/アパタイト微細構造)の回復が骨の機能化には必須であり、もはや既存の骨疾患治療デバイスや治療薬では骨機能回復を促すことは難しい。本成果では骨配向化の概念に基づく、まったく新しい骨疾患治療を実現するための、骨配向化用医療材料を開発した。レーザ照射により特定の溝幅を有するナノ配向溝構造を形成することで、細胞は溝方向に平行に、一方で骨は、常識を覆し、骨芽細胞伸展方向に垂直に配列する。さらにはマイクロアレイ法により、約3万5千個の遺伝子の中から、骨芽細胞が骨配向化を決定する遺伝子を発見した。

図1:筆者らは,材料工学的立場から骨研究に取り組むことで,コラーゲン線維/アパタイト結晶からなる骨組織が示す特有の3次元配向化構造が,必要な方位に特異的な力学機能の発揮を可能とする重要な骨質因子のひとつであることを見出している。骨は解剖学的部位に応じて異なる配向化構造を示すことで、力学的機能発現を可能とする。
図2:金属材料表面へのナノ配向溝構造形成により、骨芽細胞は溝方向に沿って配列化する一方で、従来の科学的常識を覆し、骨は細胞に垂直に配向化する。

研究の先に見据えるビジョン

人工関節等の表面にナノ配向溝構造を与えることで、人工関節周囲に形成する新生骨組織の微細構造までを健全化できる可能性を示しており、遺伝子レベルから骨配向性を自由にコントロールできる可能性を示した。再生医療においても、ナノ配向溝を利用し、再生された配向構造を持つ骨組織を生体内に戻すことで、早期に健全な骨(配向化骨)の再生を可能とするような、再生医療への応用も見込まれる。将来的には骨密度医療から骨質(骨微細構造)医療への転換をも実現可能と期待される。

図3:ナノ配向溝による特異な垂直配向化は、Tspan11遺伝子のはたらきにより制御される。インプラント表面制御により、遺伝子レベルから早期に配向化した健全化骨を誘導できる可能性を示した。

担当研究者

教授 中野 貴由、准教授 松垣 あいら(工学研究科 マテリアル生産科学専攻)

キーワード

骨疾患/骨配向性/インプラント/骨治療薬/遺伝子/タンパク質/骨芽細胞/接着斑

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬

参考URL

http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/msp6/nakano/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。