研究

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原子層ナノデバイスの創製

教授 新見 康洋(理学研究科 物理学専攻)

  • 理工情報系
  • 理学研究科・理学部

特徴・独自性

「原子一枚の層を作る」。これは20世紀において人類の究極の目標の一つでした。2005年に、粘着テープを用いるという非常に簡便な方法で、炭素の単一シート(グラフェン)デバイスが初めて作製されて以降、原子レベルで薄い「原子層薄膜」の研究が急進展しています。その中でも我々の研究グループは、抵抗の値がゼロ(ゼロ抵抗)になる原子層超伝導体に着目しました。-266℃でゼロ抵抗を示すNbSe2という超伝導体を、粘着テープを用いて薄膜を作製し、圧電性をもつLiNbO3基板に転写しました。さらにLiNbO3上に準備した櫛型電極に高周波電場をかけることで、格子の歪みに起因した「表面弾性波」と呼ばれるギガヘルツ(10億ヘルツ)の波を照射しました(図1)。その結果、通常ゼロ抵抗が観測される温度(超伝導転移温度T C)以下で、抵抗が負になることを発見しました。負の抵抗は低温になるにつれて、また表面弾性波のパワーを強くするにつれて振幅が増大することが分かりました。半導体でも負性抵抗は実現しますが、これは電流電圧特性の傾きが負になるだけで、抵抗の値自体は負にはなりません。一方、今回発見した負の抵抗は、抵抗の値そのものが負になるという新現象です。

研究の先に見据えるビジョン

この技術は、周期的な外場を駆動することで、所望の量子状態を実現できる「フロッケ・エンジニアリング」への適用や、超伝導体を用いた量子コンピュータに新機能を付与することも期待されます。

担当研究者

教授 新見 康洋(理学研究科 物理学専攻)

キーワード

ナノデバイス/原子層/超伝導

応用分野

スマートデバイス/量子コンピュータ

参考URL

https://nanoscale.jp

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。