研究 (Research)

最終更新日:

高い反応性を示すラジカル種の安定化と機能性材料の開発 (Stabilisation of highly reactive radical species and development of functional materials)

助教 西内 智彦(理学研究科 化学専攻) NISHIUCHI Tomohiko(Graduate School of Science)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 理学研究科・理学部 (Graduate School of Science, School of Science)

特徴・独自性

「ラジカル」とは電子が一つだけ孤立した状態で存在する分子のことを指す。電子が二つでペアにならなければ分子は通常非常に不安定であり、すぐに酸素など他の分子と反応を起こすためラジカル種は取扱いの難しい化学種である。しかし、ラジカル種は磁気応答性をはじめ、近赤外吸収や発光といった光学特性、さらに容易な酸化還元特性を利用した電子移動反応など様々な用途への応用が可能であるため、空気下でも安定に取り扱えるラジカル種の開発は重要な研究の一つとなっている。
我々は、アントラセン(Ant)と呼ばれる骨格をメチル基に三つ導入したTAntMラジカルの合成に成功し、空気下でも一か月以上目立った分解が進行しない高安定性、1000 nmに届く近赤外吸収と高い酸化還元能を示すことを明らかにした。さらにAnt上の置換基を変更することで二量体を形成し、その固体をすり潰すことで黄色→緑濃色へと変化して容易に単量体ラジカルを生成する刺激応答性を示すこともわかった。

研究の先に見据えるビジョン

高い安定性、近赤外まで届く幅広い光吸収特性とその酸化還元能を活かした有機太陽電池素子や近赤外発光材料としての利用や、動的核偏極法を用いたNMR測定の偏極剤としての利用が考えられる。また、刺激応答性による色の変化を利用したセンサーや損傷部分が小さくても一目でわかる素材開発などへの展開も期待できる。

担当研究者

助教 西内 智彦(理学研究科 化学専攻)

キーワード

高安定ラジカル/近赤外吸収/酸化還元特性/刺激応答性

応用分野

有機デバイス/センサー

参考URL

http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/kubo/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。