研究 (Research)

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超音波を用いた蛋白質の凝集反応の研究と神経変性疾患診断装置の開発 (Ultrasound-based studies of protein aggregation reactions and development of diagnostic equipment for neurodegenerative diseases)

教授 荻 博次(工学研究科 物理学系専攻) OGI Hirotsugu(Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

特徴・独自性

アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患においては、それぞれ原因となる蛋白質が特定されており、それらの凝集体が神経毒性を発することにより、発症することが知られています。こういった蛋白質の凝集反応には共通の特徴があります。単分子状態から安定な凝集核が生成される際の反応のエネルギーバリアが非常に高く、この生成に長時間を要するが、ひとたびこういった鋳型となる凝集核が生成されると、これを起点として凝集反応が急速に進行する、という点です。この鋳型の生成の制御こそが凝集反応の制御につながり、また、診断や創薬への応用を可能とします。私たちは、超音波による力学的刺激によりこの凝集反応を加速することに成功しました。超音波がもたらすいくつかの物理現象により、通常では生成の難しい凝集核の鋳型の高効率生成を可能としました。例えば、超音波が溶液中に作るマイクロバブルの表面に単分子を吸着させ、超音波によりバブルを圧壊させることにより、局所的な濃縮を起こし、高いエネルギーバリアを有する核生成反応を高効率に発生させることができます(図上)。また、こういった局所濃縮現象が、溶液中に溶解している塩の析出と融解によっても引き起こされることを見出しました。さらに、顕微鏡観察の下、チップ上のわずか数十nmという領域に超音波刺激を与えながら、この凝集反応を促進させるシステムを独自に開発しました(図下)。

研究の先に見据えるビジョン

神経変性疾患に関わる蛋白質の凝集反応には未解明な部分が多く、これら独自の計測手法を用いることにより、凝集メカニズムの本質に迫ることができると期待されます。さらには、各疾患の原因となる蛋白質の凝集反応が加速あるいは制御される条件を見いだしたり、検体内の凝集核の存在やその凝集能力を迅速に評価することによる疾患発症リスクの評価を行ったりすることが可能となります。

担当研究者

教授 荻 博次(工学研究科 物理学系専攻)

キーワード

蛋白質凝集/超音波/顕微鏡

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬

参考URL

http://www-qm.prec.eng.osaka-u.ac.jp

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。