研究

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代謝の“流れ”を見る技術の開発

准教授 岡橋 伸幸、教授 松田 史生(情報科学研究科 バイオ情報計測学講座)

  • 理工情報系
  • 情報科学研究科

特徴・独自性

代謝は糖を分解して、細胞材料やエネルギーを獲得する全生物に共通の重要な活動である。近年、がんなどの疾患細胞は、正常細胞とは異なる代謝を行うことが示唆され、創薬ターゲットや診断マーカーの探索に代謝計測のニーズが高まっている。代謝反応は直接計測することができないため、従来は代謝産物や代謝酵素の量から間接的に代謝状態が推定されてきた。一方、我々は代謝をより直接的に計測するために、炭素の安定同位体13Cで標識した糖を細胞に取り込ませ、それらの細胞内物質中の分布を質量分析装置で計測することで、物質が変換される“流れ”を定量する13C代謝フラックス解析法の開発に取り組んできた。特に、非常に構造の似通った糖リン酸化合物を完全分離する分析法を島津製作所と共同で開発し、それらの中に分布する13C標識を精密計測することで、がん細胞の増殖に必要な核酸前駆体を生合成する代謝の流れをとらえることに成功した。

研究の先に見据えるビジョン

代謝を流れとしてとらえることで、疾患細胞に特異的な代謝の発見やそれらを正常化するような治療戦略の立案が期待できる。また、代謝はすべての生物に共通であることから、微生物や植物などの代謝計測に応用することも可能である。有用物質生産微生物の生産性診断や、植物の生育評価などにも本技術は有効であると期待される。

担当研究者

准教授 岡橋 伸幸、教授 松田 史生(情報科学研究科 バイオ情報計測学講座)

キーワード

代謝/質量分析/13C代謝フラックス解析/がん

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬

参考URL

http://www-symbio.ist.osaka-u.ac.jp/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。