研究

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大腸がんの新たな代謝経路を標的とした治療法開発

教授 森井 英一(医学系研究科 病態病理学)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

特徴・独自性

大腸がんは日本人において罹患率、死亡率ともに上位に入るがんである。切除不能進行・再発大腸がんの治療法として従来の抗がん剤の組み合わせや分子標的薬が開発されているが根治は難しい。がん細胞は、自身の生存に有利になるように、正常組織とは全く異なる代謝動態を獲得していることが知られており、がん特異的な代謝経路の同定とそれを標的とした治療法の開発が近年試みられている。我々は中枢神経系でのみ機能が明らかにされていたセリンラセマーゼという代謝酵素が、大腸がんにおいてL-セリンからピルビン酸を産生する新たながん代謝経路を担い、がん細胞の増殖を促進することを明らかにした。具体的には、セリンラセマーゼがヒストンアセチル化、ミトコンドリアの量・質の維持、アポトーシス抵抗性、化学療法抵抗性に寄与することを明らかにした。そして、セリンラセマーゼ阻害剤が大腸がん細胞の増殖を抑制し、さらには従来の抗がん剤である5-フルオロウラシルとの併用で大腸がん細胞の増殖を顕著に抑制することを明らかにした。。

研究の先に見据えるビジョン

セリンラセマーゼは、大腸がんの代謝経路を標的とするという新たなコンセプトの創薬ターゲットになることが期待される。より特異的にセリンラセマーゼを阻害する低分子化合物や抗体薬品の開発が望まれる。

担当研究者

教授 森井 英一(医学系研究科 病態病理学)

キーワード

大腸がん/がん代謝/セリンラセマーゼ/治療法開発

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬

参考URL

http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molpath/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。