研究 (Research)

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月-地球システムの環境科学 (Environmental science of the Moon-Earth system)

教授 寺田 健太郎(理学研究科 宇宙地球科学専攻) TERADA Kentaro(Graduate School of Science)

    特徴・独自性

    我々の研究室では、「月―地球システム」を様々な角度から研究しています。アポロ計画で採取された岩石や月隕石の質量分析(同位体分析)から火山活動を調べたり(Terada et al. Nature 2007)、月探査衛星「かぐや」を使って表層環境を調べています。最近の我々の発見は、「月を調べることで、地球の知られざる環境変動もわかってきた」ことです。たとえば、質量分析計で月環境を調べたところ、太陽―地球―月が一直線になる時、すわなち満月の時、地球大気(酸素)が太陽風で剥ぎ取られ、月面にインプラントされていることを発見しました(Terada et al. Nature Astronomy 2017)。また、月のクレーターを詳細に調べたところ、月には絶えず隕石が衝突しており、特に8億年前に直径90kmのクレーターを作るような小惑星シャワーが月―地球システムを襲ったことが明らかになりました。これは恐竜を絶滅させた隕石衝突の30-60倍の小惑星の破片が地球を襲ったことになります(Terada et al. Nature Communications 2020)。これらの発見は、人類初の知見として国内外で大きく報道されました(例えば、NHKニュース以外にも、BBCラジオ、ロシア国営放送ニュースRussia-24に出演)。

    図1:太陽風で剥ぎ取られ、月に到達する地球大気(酸素)の想像図
    図2:8億年前、月と地球を襲った小惑星シャワーの想像図

    研究の先に見据えるビジョン

    人類が月に着陸して約50年。人類は再び月をめざしており、2020年代後半には月面基地の建設など、人類の活動領域が格段に広がります(アルテミス計画)。我々が明らかにした月環境の知見は、人類が月面で暮らす上で、最低限、知っておかなければならない基礎科学データになることでしょう。見上げ れば 「形」を変えなが らいつも夜空にある「月」は、「身近で 不思議な天体」として、多くのお子さんの心をつかんで いて、「月は子ど もたちの 最 先 端 科 学 へ の 入り口になる」と講 演 のたび に実 感しています。Nature姉妹紙掲載論文を絵本にして、未来の科学者育成も進めています。

    図3:上梓した科学絵本(大阪大学出版会)

    担当研究者

    教授 寺田 健太郎(理学研究科 宇宙地球科学専攻)

    ※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
    https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/tm5gp0/

    キーワード

    月環境科学/地球環境科学/質量分析/アウトリーチ/科学教育

    応用分野

    ナノテクノロジー/科学教育

    参考URL

    https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/tm5gp0
    http://planet.ess.sci.osaka-u.ac.jp/index.html

    ※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。