研究

最終更新日:

難治性甲状腺がんに対する標的アルファ線核医学治療

助教 渡部 直史(医学系研究科 核医学)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

特徴・独自性

本研究では、大阪大学核物理研究センターの加速器を用いて、アスタチン(At-211)と呼ばれる放射性核種を製造し、多発転移を持つ甲状腺がん患者の治療を行うことを目標としている。これまでの甲状腺癌の治療においては、放射性ヨウ素(I-131)を用いた治療が行われてきた。しかし、治療効果が十分でないことがあり、投与後は周囲への被ばくを避けるために専用の治療病室への入院が必要であった。アスタチンはヨウ素に類似した性質を持つ一方で、アルファ線と呼ばれる飛程の短い放射線を放出することから、周囲の被ばくがほとんどなく、外来治療が可能である。さらに従来のI-131が放出するベータ線よりもがん細胞に対するDNA傷害作用が強く、既存治療が奏功しない場合でも、治療効果が期待できる。

研究の先に見据えるビジョン

現在、大阪大学医学部附属病院において、AMEDの支援を受けて、医師主導治験の準備を進めている(2021年度に開始予定)。将来的には国内に加速器を備えた供給拠点を整備し、各医療機関に配送することで全国の拠点病院で治療が実施できる体制を見込んでいる。さらに、I-131の製造には医療用の原子炉が必要であり、100%輸入に頼っている状況であるが、将来的に加速器で製造できるアスタチンに切り替えることで、国内自給の達成を目指している。

担当研究者

助教 渡部 直史(医学系研究科 核医学)

キーワード

核医学治療/アスタチン/難治性がん/アルファ線/加速器

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬/加速器技術

参考URL

http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/tracer/about/research/nuclear_01.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。