研究

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大腸がんの発症に関連する腸内環境に関する研究

教授 谷内田 真一(医学系研究科 がんゲノム情報学)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

特徴・独自性

大腸がんは胃がんを抜き、日本で一番罹患数の多いがん種となった。食事などの生活習慣の欧米化がその原因と考えられているが、そのメカニズムは明らかではない。大腸がんは大腸ポリープ(腺腫:前がん病変)、粘膜内がんを経て進行がんへと進展する(多段階発がん)。これまで、進行した大腸がんと関連する腸内細菌はいくつか特定されてきたが、これらは進行した大腸がんの存在により二次的に増減していた可能性が指摘されてきた。今回、我々はがんのステージによって便中に増減している腸内細菌や代謝物質が大きく異なることを明らかにした(図1)。特に大腸がんの多段階発がん過程において、多発ポリープ(腺腫)や粘膜内がんの病期でのみ上昇している細菌として、Atopobium parvulum(アトポビウム・パルブルム)やActinomyces odontolyticus(アクチノマイセス・オドントリティカス)を特定し(図2)、これらの細菌が大腸がんの発症初期に関連することが強く示唆された。

研究の先に見据えるビジョン

個々人の腸内細菌の違いに踏み込んでがんの予防、リスク診断や先制医療を行う「Microbiome-Based Precision Medicine」の時代が来ると考えている。科学的根拠を踏まえた新たな疾病予防・治療、それに付随する産業(食品等)など、新たな需要の掘り起こしと成長分野を生み出す潜在性がある。

担当研究者

教授 谷内田 真一(医学系研究科 がんゲノム情報学)

キーワード

大腸発がん/腸内細菌/メタゲノム解析

応用分野

医療・ヘルスケア/がん予防

参考URL

http://www.cgi.med.osaka-u.ac.jp/index.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。