研究

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サルメガネを用いた野生ニホンザルの個体識別

講師 山田 一憲(人間科学研究科 附属比較実験施設)

  • 人文学社会科学系
  • 人間科学研究科・人間科学部

特徴・独自性

私たち霊長類学者はサルの顔を覚えて、誰がどんな行動をするのかを記録しています。1頭1頭異なるサルの行動を記録して解析することが、霊長類の進化の解明に繋がります。一方で、学生や一般の方がサルの顔を覚えるには、多くの時間と努力が必要になります。私たちは、サルの顔を深層学習によって判別することで、誰もが簡単にサルの豊かな個性に触れられるシステムを開発しています。現在は、スマートフォンで撮影した写真をサーバに送ることで、その個体の名前と特徴が返送されるシステムを構築しています。

画像1 野生ニホンザルを観察する霊長類学者

研究の先に見据えるビジョン

将来的には、このシステムをカメラ付きのAR(拡張現実)メガネに装備することを目指しています。この「サルメガネ」をかけて、山の中でサルをみると、私たち研究者が集めたその個体の情報がレンズに投影されます。私たち大阪大学のグループは岡山県真庭市に生息するニホンザルの群れを62年にわたって継続調査してきました。長い研究の歴史の中で記録したその個体の人生やファミリーヒストリーを、霊長類学者と同じように知ることができれば、目の前のサルを観察する楽しさを手軽に体験してもらえるのではないかと考えています。現在ヒトと野生ニホンザルの間には様々な軋轢が生じています。目の前のサルが、かけがえのない人生を持った固有の存在であることを知ることで、ヒトと野生動物の共生の課題に新しい展開を拓くことができると考えています。

画像2 サルメガネに示される個体情報

担当研究者

講師 山田 一憲(人間科学研究科 附属比較実験施設)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/84recp/

キーワード

霊長類学/深層学習/野猿公苑/ヒトと動物の共生/Life history

応用分野

野生鳥獣管理/AR(拡張現実)/里山観光

参考URL

https://ethology-osaka.tumblr.com/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。