研究

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Brain-Computer Interfaceによる幻肢痛治療

教授 栁澤 琢史(高等共創研究院/医学系研究科)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

特徴・独自性

事故などで手や足を失った後に、失った手や足が未だあるように感じ、その幻の手足が、とても痛く感じることを幻肢痛と呼びます。幻肢痛は、失った手足に関連した脳活動の異常によって生じると考えられてきましたが、それを治療する有効な方法は確立されていませんでした。我々は非侵襲的に高精度の脳情報を得られる脳磁計に脳情報解読技術を適用することで、患者が幻肢運動を意図することで映像の幻肢が制御されるBrain-Computer Interface (BCI)を開発しました(図1)。そして、BCIで幻肢の映像を操作する訓練を3日間行うことで、幻肢痛を低減できることを、世界で初めて明らかにしました(図2)。幻肢という見えない腕を脳情報として取り出し、それを動かす訓練をすることで、痛みを治療するBCIは我々独自の技術です。

図1 幻肢痛を制御するBCI脳磁計に入った幻肢痛患者さんは目の前のモニターで、
ロボットや幻肢の映像を観察する。脳磁計は患者さんの脳活動をリアルタイムに、コンピュータのAIへ出力する。AI は脳活動から幻肢に関する脳情報を抽出し、これに基づいてロボットや幻肢の映像を制御する。患者さんは、自分の幻肢を動かすつもりで、ロボットや幻肢の映像をコントロールする訓練を行う。
図2 3日間のBCI訓練による幻肢痛の変化12名の幻肢痛患者さんが3日間のBCI訓練を行った際の痛みの強さをVisual Analogue Scaleにて評価した。BCI訓練(赤)と同じ映像をランダムに動かした偽訓練(黒)とを比較するとBCI訓練後、5日間は有意に痛みが低下することが示された。

研究の先に見据えるビジョン

幻肢痛以外にも、異常な脳活動に伴う痛みは多く、慢性腰痛や関節痛なども脳活動の異常が関与していると考えられています。今後、BCIを用いた脳活動の修飾を介して、脳活動と痛みとの関係が明らかになり、痛みを治療できるようになると期待されます。また同様に、うつ病や認知症など脳活動状態の異常に伴う精神神経疾患への幅広い応用も期待されます。

担当研究者

教授 栁澤 琢史(高等共創研究院/医学系研究科)

キーワード

幻肢痛/Brain-Computer Interface/neurofeedback/脳磁計/神経可塑性

応用分野

医療・ヘルスケア

参考URL

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200717_1

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2021(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。