研究 (Research)

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量子化学理論と計算機シミュレーションによるC60ポリマーナノ細孔内の二酸化炭素固定化に関する反応機構解明 (Elucidation for reaction mechanism of CO2 immobilization in nanopores of C60 polymer via quantum chemical theory and computer simulation)

准教授 北河 康隆(基礎工学研究科) KITAGAWA Yasutaka(Graduate School of Engineering Science)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 基礎工学研究科・基礎工学部 (Graduate School of Engineering Science, School of Engineering Science)

English Information

研究の概要

フラーレンC60薄膜に電子線照射をすることでナノ細孔を有する1次元凹凸C60ポリマーが生じます。このポリマー内でおこる、CO2とH2Oから炭酸イオンが生じる反応のメカニズムを量子化学理論に基づいた計算機シミュレーション(量子化学計算)により推定しました。その結果、まずCO2がC60ポリマーをブリッジする形でピン留めされ、構造歪みによるLUMOエネルギーの安定化とC60ポリマー鎖表面の電荷分極の増大により活性化します。そこにH2Oが接近することで遷移状態が安定化し反応が進行している可能性を示すことに成功しました。

研究の背景と結果

私たちは、量子化学理論に基づいた計算機シミュレーション(量子化学計算)を実行することにより、この反応機構を明らかにすることを試みました。図に示したように1次元凹凸C60ポリマー薄膜のモデル構造を構築し、ナノ空間内でのCO2とH2Oの挙動を調べたところ、C60ポリマーをブリッジする形でピン留めされたCO2が(図A)、構造歪みによるLUMOエネルギーの安定化と、ポリマー鎖表面の電荷分極の増大により活性化することがわかりました。そこにH2Oが接近する(図B)ことで遷移状態が安定化され(図C)、結果として容易に反応が進行している(図D)可能性を示すことに成功しました。
このように、量子化学計算は実験では説明が難しい触媒反応機構を解明することができるのみならず、そこから得られた知見により、化合物の改良やひいては新たな触媒などのデザインを行うことができるため、SDGsの達成に向けた研究をさらに加速させることを可能とします。

研究の意義と将来展望

量子化学計算は、実験では説明が難しい触媒反応機構を解明することができるのみならず、そこから得られた知見により、化合物の改良や、ひいては新たな触媒などのデザインを可能とします。したがってSDGsの達成に向けた研究を今後さらに加速させることが可能となります。このように量子化学理論とそれに基づくコンピュータシミュレーションは、種々の化学現象の原理解明のための強力なツールであるのみならず、新規機能性材料開発においても、極めて有効なアプローチ法です。

担当研究者

准教授 北河 康隆(基礎工学研究科)

キーワード

量子化学理論/計算機シミュレーション/触媒反応機構/CO2固定

応用分野

機能性触媒開発/機能性材料開発

参考URL

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20201027_1
https://news.mynavi.jp/article/20201029-1444179/
https://research-er.jp/articles/view/93424

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。