研究

最終更新日:

AIネットワークの形成及び利活用のガバナンスの在り方

教授 福田 雅樹(社会技術共創研究センター 総合研究部門)

  • 全学・学際など
  • 社会技術共創研究センター

研究の概要

AIシステムの多くは、インターネット等情報通信ネットワークと接続され、他のシステムと相互作用する「AIネットワーク」の構成要素として利活用される。本研究は、AIネットワークの適正かつ円滑な形成及び利活用の確保及び増進を図るためのガバナンスの在り方に関し研究するものである。

研究の背景と結果

AIシステムの多くは、インターネット等情報通信ネットワークと接続され、当該情報通信ネットワークを介して他のシステムと相互作用する「AIネットワーク」の構成要素として利活用される。社会におけるAIネットワークの形成が進展し、AIネットワークが広く利活用されるようになる事象を総称して「AIネットワーク化」という。

AIネットワークの利用者にはAIネットワークの機能に応じた便益がもたらされ、社会にも当該便益に応じた恵沢がもたらされ得る一方で、AIシステムのブラックボックスとしての性質、超高頻度な相互作用、入力され又は出力されるデータ等の性質、当該データ等の利活用の方法等によっては、利用者若しくは他者の権利利益又は公共の利益が害されるリスクももたらされ得ることが指摘されている。また、古典的ネットワーク効果に伴う恵沢及びその副作用としての寡占化の可能性に加えて、学習機能を有するAIシステムを用いるAIネットワークにおけるデータ駆動型ネットワーク効果に伴う恵沢及びその副作用としての寡占化の可能性も指摘されている。

AIネットワークについては、こうした便益、便益に応じた恵沢、恵沢の副作用としての弊害及びリスクに関連して様々な倫理的・法的・社会的課題(ELSI)が指摘されており、適正かつ円滑な形成及び利活用の確保を図るためのガバナンスの在り方が問題となる。本研究は、AIネットワーク化の進展を見据え、AIネットワークの適正かつ円滑な形成及び利活用の確保及び増進を図るためのガバナンスの在り方に関し研究するものである。これまで理科系及び文科系の諸学の研究者、企業、法曹、関係当局等と広く連携しつつ研究を進めてきたところ、その成果の趣旨の一部は、総務省等の関係会議における検討に反映されているほか、OECD等の検討における我が国からの寄与にも反映されている。

研究の意義と将来展望

AIネットワークは、デジタル社会ないしSociety5.0を実現するための基盤となる。デジタル社会ないしSociety 5.0を持続可能かつ包摂的に実現するためには、AIネットワークの適正かつ円滑な形成及び利活用の確保及び増進を図るためのガバナンスが必要となる。

AIの利活用については、利活用の分野に共通しての非規制的・非拘束的な国際的指針が形成されているが、AIネットワークの形成及び利活用の全体にまで射程が及ぶものではない。また、非規制的・非拘束的な指針であるため、実効性の確保の在り方が問題となる。この点、EUにおいては、AIの利活用の分野ごとのリスクの高低等に応じた法規制の導入が検討されている。

本研究は、AIネットワークの形成及び利活用の全体にわたるガバナンスの在り方に関し、AIネットワークの利活用の分野ごとのリスクの高低等に応じた法規制の導入の適否等も含め検討して具体的な示唆を得ることにより、デジタル社会ないしSociety 5.0の持続可能かつ包摂的な実現に寄与しようとするものである。

担当研究者

教授 福田 雅樹(社会技術共創研究センター 総合研究部門)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2020/uw59yz/

キーワード

AI/情報通信法/情報通信政策/ガバナンス/倫理的・法的・社会的課題(ELSI)

応用分野

AI/情報通信法/情報通信政策

参考URL

https://researchmap.jp/fukuda/
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34939/
https://www.coe.int/en/web/freedom-expression/human-rights-in-digital-sphere/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。