研究 (Research)
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社会的なものを組み直す超学際研究(学際共創研究) (Reassembling the Social through Transdisciplinary Research)
教授 山崎 吾郎(COデザインセンター) YAMAZAKI Goro(Center for the Study of Co* Design)
研究の概要
複雑化した社会の事象を、多様な専門分野の協力関係によって明ら か に し よ う と す る 研 究 は、従 来、学 際 研 究(interdisciplinaryresearch)と呼ばれてきました。しかしながら、近年では研究活動それ自体の社会性(研究にまつわる倫理、政治、経済)に目が向けられるようになり、社会活動と研究活動を安易に切り離して考えることは難しくなっています。そうした状況において、研究活動をただアカデミアの中で行うだけでなく、社会やそこで生活を営む人びとと「ともに行う」仕組みが求められています。学際性に加えて社会とのつながりをもった研究を、超学際研究または学際共創研究(transdisciplinary research)と言います。本研究では、人文科学、社会科学から自然科学にわたる多様な専門分野が協働し、同じ社会に生きるさまざまなアクターとの協働によって知的探究を行えるような、新しい調査研究の体制を整備し、そこから教育、研究、そして実践の意味ある循環を作り出すことを目的としています。
研究の背景と結果
真に問うべき問題を探究するためのプロセスは、まず当事者・関係者を含む多様なアクターと協働してプロジェクトを立ち上げ、実施することからはじまります。この活動を通じて、参加者は自らの当事者性や専門性に自覚的になり、そのうえで、協働して探究すべき問題をともに作り上げていきます。
社会現象、自然現象、そして経済活動がまじりあうテーマの一例として、「化粧品に用いられる化学物質の使用とその規制」に関する過去のプロジェクトを紹介してみましょう。まず、化粧品はマーケットを通じて普及する嗜好品と考えられます。使用される原料は自然由来のものから合成化合物までさまざまで、消費者のニーズに応じて商品が開発されています。安心して効果の高い化粧品を安く手に入れられることは消費者の利益となりますが、安全性や製造コストは、企業、開発者、消費者、また化粧品をとりまく関連団体のいずれか一つの利害関心で決定できる問題ではありません。
化粧品そのものが、科学技術、社会的慣習、経済活動の混ざり合った対象であるため、多様な要素の絡まり合った問題を過度に単純化することのなく扱おうとするとき、超学際的な研究が求められることになります。
本研究では、こうした複合的な要素を有した対象(問題)として、ほかに「過疎地域におけるモビリティ」、「都市部の空き家問題」、「アバターの教育利用」といったテーマをとりあげて、自治体や企業といった学外の組織の協力を得ながら超学際的プロジェクトを実施しています。そしてそこから、新しい協働の場を作り、超学際研究の方法論を探求し、また研究成果を社会に還元するしくみを作り出す活動を行っています。
研究の意義と将来展望
超学際研究は、新しい学問領域の制度化や体系化を目指すものではなく、真に問われるべき問題の発見や、実践的で協働的な知的探究プロセスをとおして、開かれた学知の場を整備する取り組みといえます。多様な知の相互作用に目を向け、社会との継続的なかかわりのなかで学術を実践するための条件を整える活動でもあります。こうしたしくみが、分野や立場をこえた協働を活性化させ、そこから新しい研究テーマ、教育の機会、そして実践が生み出されていくことを期待しています。
担当研究者
教授 山崎 吾郎(COデザインセンター)
キーワード
超学際/参加/協働/共創/社会問題
応用分野
学際研究/超学際研究/学際共創研究