研究 (Research)

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多点同時ラマン計測装置の開発 (Development of a multi-point simultaneous Raman measurement system)

教授 藤田 克昌、特任研究員 畔堂 一樹(工学研究科 物理学系専攻) FUJITA Katsumasa, BANDOU Kazuki(Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

研究の概要

ラマン分光計測は、試料分子構造固有の振動エネルギーを反映する波長を分光分析する手法であり、非侵襲に成分分析が可能である。そのため、ラマン分光は様々な分野で分析技術の一つとして活用が期待される。しかし、ラマン散乱光は励起光のおおよそ100万分の1程度の極めて微弱な光であるため、一般には測定点1点につき、1回あたり数秒、場合によっては数分の測定時間が必要である。多数の試料を分析する場合には、非常に長い時間を要する。
本研究では、光学系を工夫することで、多点同時に、高い集光効率でラマンスペクトルを取得する方法を提案し、ハイスループット検出が必要な場面での活用を目指している。市販の96穴マイクロウェルプレート上の96の試料を同時に分光分析する装置の開発に成功し、アプリケーション開発を進めている。

研究の背景と結果

創薬の現場では、激化する創薬開発競争のなかで、効率よく目的の化合物を合成するために、様々な条件下において、高感度に化合物の状態をモニタリングする必要があると同時に、医薬品に対する細胞の応答を時系列で確認することが重要である。さらに、合成後の安定性の評価も品質保証の観点から重要な検査項目の一つである。また、特にバイオ医薬の開発や生産においては、医薬品製造のプロセスが生物由来で安定化が困難であることもあり、品質の確認が極めて重要である。ラマン分光計測は、非破壊・非標識に高精度な成分分析が可能な分析技術であり、これら創薬開発やバイオ医薬品開発生産における現場ニーズに最適の分析方法であるが、前述のように極めて微弱なラマン散乱光を扱うため分析に時間がかかる欠点があった。今回、独自光学系の開発により、96点同時に高感度なラマン散乱光の計測が可能な多点同時ラマン計測装置の開発に成功した。上述のような創薬におけるハイスループット検出や、細胞応答やバイオ医薬品のリアルタイム観測を実証すべく検証を進めている。

研究の意義と将来展望

ラマン分光計測にかかる時間が大幅に短縮できれば、製薬・創薬のスクリーニング試験、再生医療における細胞診断のみならず、食品製造現場における品質管理、セキュリティ面での爆発物の分析などへの幅広い応用が期待できる。ラマンスペクトルという豊富な情報を多点同時検出する価値は高い。我々は、既に、開発した試作機をもとに、製薬・創薬におけるアプリケーション開発や、さらなる高感度化を目指して開発を続けている。

担当研究者

教授 藤田 克昌、特任研究員 畔堂 一樹(工学研究科 物理学系専攻)

キーワード

ラマン分光/スクリーニング/分光分析/ハイスループットスクリーニング/創薬

応用分野

創薬/再生医療/食品衛生検査

参考URL

https://lasie.ap.eng.osaka-u.ac.jp/home_j.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。