研究

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人工腱統合バイオプリント法により作製した細胞ファイバーの組織化による培養肉の創製

教授 松崎 典弥(工学研究科 応用化学専攻)

  • 理工情報系
  • 工学研究科・工学部

研究の概要

和牛肉の組織構造を設計図に、3D プリントで筋、脂肪、血管の線維組織ファイバーを作製して束ねることで、複雑な和牛肉の構造をテーラーメイドで作製できる技術を開発しました。

研究の背景と結果

世界の人口は2050年には、97億人に達すると予想されており、人口増加や食生活の向上が、タンパク質の需要と供給のバランスが崩れるタンパク質危機(プロテインクライシス)を引き起こすとの予測があります。そこで、代替タンパク質として植物由来タンパク質と共に期待されているのが培養肉です。培養肉は、動物から取り出した少量の細胞を培養により人工的に増やしてつくられる肉であり、2013年頃から研究が本格化してきました。今では、大学の基礎研究だけでなく、実用化に向けて世界中で様々なベンチャー企業が設立されています。しかし、これまで報告されている培養肉のほとんどは筋線維のみで構成されるミンチ様の肉であり、肉の複雑な組織構造、例えば和牛の“サシ” などを再現することは困難でした。本研究グループは、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現可能な「3Dプリント金太郎飴技術」を開発することで、筋・脂肪・血管の線維組織で構成された和牛培養肉の構築に世界で初めて成功しました。これまで報告されている培養肉のほとんどは筋線維のみで構成されるミンチ様の肉であり、肉の複雑な組織構造を再現することは困難でした。今回、本研究グループは、筋・脂肪・血管という異なる線維組織を3Dプリントで作製し、それを金太郎飴のように統合して肉の複雑な構造を再現する「3D プリント金太郎飴技術」を開発しました。

研究の意義と将来展望

本研究により、肉の複雑な組織構造をテーラーメイドで構築できるようになりました。今後技術の改善により、和牛の美しい“サシ” などさらに複雑な肉の構造の再現や、脂肪や筋成分量の制御による微妙な味、食感の調節も可能になります。また、3D プリント以外の筋、脂肪、血管細胞の培養プロセスも含めた自動装置を開発できれば、場所を問わずどこでも培養肉の作製が可能となり、SDGs への大きな貢献が期待されます。

担当研究者

教授 松崎 典弥(工学研究科 応用化学専攻)

キーワード

3Dプリント/組織工学/培養肉

応用分野

食料

参考URL

https://www.reuters.com/lifestyle/science/japanese-scientists-work-up-an-appetite-lab-grown-wagyu-beef-2021-10-08/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。