研究 (Research)

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関節炎における破骨前駆細胞の同定と解析 (Identification and analysis of osteoclastic progenitor cells in arthritis)

教授 石井 優(医学系研究科 免疫細胞生物学) ISHII Masaru(Graduate School of Medicine)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))

研究の概要

骨を破壊する破骨細胞は、骨髄内で生理的な骨リモデリングに関わる一方、関節炎では骨を外側から破壊する。これまで数多くの研究が、骨髄や脾臓の破骨前駆細胞の同定を試みてきたが、関節組織における探索は行われてこなかった。今回我々は、関節炎モデルマウスより独自の関節組織を採取するプロトコールを編み出すことで、関節炎の病変部である炎症滑膜を単離することに成功した。このプロトコールを用い、炎症関節組織には、病的に骨を破壊する“悪玉破骨細胞”へと変化する特殊なマクロファージ(悪玉破骨前駆細胞)が存在することを突き詰め、これを“arthritis-associated osteoclastogenic macrophage; AtoM(アトム)”と命名した。さらに網羅的な遺伝子発現を調べることで、AtoM がFoxM1 と呼ばれる転写因子により部分的に制御されていることが示され、FoxM1 の阻害薬がマウスにおいても、関節リウマチ患者さんの関節液から採取した細胞においても、破骨細胞への分化を阻害することが明らかとなった。

(図1)悪玉破骨細胞同定の試み
(図2)関節組織の破骨前駆細胞の同定
A. 関節のみにR3の細胞集団が存在する
B. 関節のR3の細胞集団は著明な破骨細胞形成能力と骨を溶かす能力を有す

社会実装に向けた将来展望

 病的な破骨細胞が発生する過程が詳細に解き明かされたことで、関節の表面に形成される病的な破骨細胞をターゲットとする新たな治療法の開発が期待される。

(図3)FoxM1阻害薬がAtoMの破骨細胞分化を阻害する

担当研究者

教授 石井 優(医学系研究科 免疫細胞生物学)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/jwhvw/

キーワード

関節リウマチ/関節炎/破骨細胞

参考URL

http://www.icb.med.osaka-u.ac.jp/index.html

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(社会実装を目指す)より抜粋したものです。