研究 (Research)
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大腸がんの新たな代謝経路を標的とした治療法開発 (Developing therapies targeting new metabolic pathways in colorectal cancer)
教授 森井 英一(医学部附属病院 病理診断科) MORII Eiichi( Osaka University Hospital)
研究の概要
大腸がんは日本人において罹患率、死亡率ともに上位に入るがんである。切除不能進行・再発大腸がんの治療法として従来の抗癌剤の組み合わせや分子標的薬が開発されているが根治は難しい。がん細胞は、自身の生存に有利になるように、正常組織とは全く異なる代謝動態を獲得していることが知られており、がん特異的な代謝経路の同定とそれを標的とした治療法の開発が近年試みられている。我々は中枢神経系でのみ機能が明らかにされていたセリンラセマーゼという代謝酵素が、大腸がんにおいてL-セリンからピルビン酸を産生する新たながん代謝経路を担い、がん細胞の増殖を促進することを明らかにした。そして、セリンラセマーゼ阻害剤が大腸がん細胞の増殖を抑制し、さらには従来の抗癌剤である5-フルオロウラシルとの併用で大腸がん細胞の増殖を顕著に抑制することを明らかにした。またその後の研究により、別のD-アミノ酸代謝酵素であるC14orf159がミトコンドリア膜電位を維持することにより大腸がんの浸潤・転移を抑制することや、ミトコンドリアがスーパーエンハンサー領域に多いヒストン修飾であるH3K27acの維持に関わることを明らかにしている。
社会実装に向けた将来展望
セリンラセマーゼやミトコンドリアが維持するH3K27acは、大腸がんの代謝経路やエピジェネティクスを標的とする新たなコンセプトの創薬ターゲットになることが期待される。これらをより特異的に阻害する低分子化合物や抗体薬品の開発が望まれる。
担当研究者
教授 森井 英一(医学部附属病院 病理診断科)
キーワード
大腸癌/セリンラセマーゼ/ミトコンドリア/ヒストンアセチル化