研究

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光捕集補助型の光線力学療法用光増感剤の開発

講師 重光 孟(工学研究科 応用化学専攻)

  • 理工情報系
  • 工学研究科・工学部

研究の概要

日本人の死亡原因のトップは癌であり、従来、癌に対しては、外科手術、薬物療法、放射線治療の三大療法が中心であったが、近年、低侵襲で副作用が少なく、低コストでありながら効果が大きい光学力線療法が注目を集めている。光学力線療法では、あらかじめ光増感剤を患者の体内に導入したうえで、光照射を行い、発生した活性酸素によって癌細胞を死滅させるが、本研究では、生体深部における光線力学療法の実現を志向し、優れた光吸収特性と活性酸素発生能を有する増感剤の開発に成功した。活性酸素発生を抑制する主な原因と考えられている光増感剤の分子間衝突を抑制するために、光捕集分子および環状オリゴ糖であるシクロデキストリンを複合した分子集合体を構築した結果、活性酸素の発生効率は劇的に増加することを明らかにした。特定の分子の組み合わせで、分子間衝突の抑制が顕著に抑制され、活性酸素発生を向上させることが可能であることを実証した。

社会実装に向けた将来展望

従来使用されてきた光増感剤と光捕集分子を組み合わせることで優れた活性酸素発生能を有するナノ粒子が構築できることを見出した。既存の光増感剤よりも短時間かつ低強度の光照射で良好な疾病治療が可能となる可能性がある。使用する原料化合物は食用添加物にも使用されており、安価に入手することができるという点でコスト面も非常に魅力的である。

担当研究者

講師 重光 孟(工学研究科 応用化学専攻)

キーワード

光学力線療法(PDT)/癌治療/光増感剤/活性酸素/シクロデキストリン

参考URL

http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~kida-lab/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(社会実装を目指す)より抜粋したものです。