研究

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新規の中枢神経痛み伝達回路を抑制する疼痛治療薬の創薬

教授 山下 俊英(医学系研究科 分子神経科学)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

研究の概要

山下先生の研究グループは、痛みシグナルの伝達や中継に重要な部位である脊髄内の介在神経からネトリン4というタンパク質が分泌され、痛みを増幅させていることを発見した。
痛みの原因となる組織病変が存在せず、長期にわたり持続する痛みは「慢性疼痛」と呼ばれ、世界では15億人が「慢性疼痛」に悩まされている。さらに現行の治療に満足している患者は1/4程度であり、大きな問題となっている。その要因として、慢性疼痛の病態機構は解明されていない部分が多く、痛みを和らげるために中枢神経にアプローチする治療薬が大部分を占めるが、副作用が大きく患者を悩ませていることにある。
山下先生の研究グループが、「介在ニューロンより分泌されたネトリン4がUnc5B受容体と結合することで疼痛を引き起す」という新たな作用機序を発見したことにより、これまでの中枢神経にアプローチする治療薬と異なり、痛み伝達物質に直接アプローチする副作用の少ない画期的な治療薬の開発が可能となる。

社会実装に向けた将来展望

製薬業界では、副作用の少ない新規作用機序の薬剤開発が課題であるが、まだ有効な治療薬は開発されていない。一方で神経性の疼痛薬の国内市場規模は2017年度で1,373億円であるが、これは新規作用機序の薬剤上市でさらに成長加速が見込まれる。山下先生のネトリン4に直接作用する抗体作成の研究は順調に進んでおり、企業との情報交換も行われていることから、ベンチャー起業への可能性は高い。

担当研究者

教授 山下 俊英(医学系研究科 分子神経科学)

キーワード

神経科学/分子生物学/疾患関連遺伝子/神経障害性疼痛

参考URL

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2016/20161118_1

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(社会実装を目指す)より抜粋したものです。