研究

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“物づくり”に変革をもたらす接着性改善技術

助教 大久保 雄司(工学研究科・附属精密工学研究センター)

  • 理工情報系
  • 工学研究科・工学部

研究の概要

くっつかない材料の代表例は、フライパンのテフロン加工でお馴染みのフッ素樹脂(PTFE)である。PTFEの表面は、表面エネルギーが低く、低分子量の脆い層(脆弱層)も存在するため、接着剤すらもくっつかない。このPTFEがくっつくようになる唯一の方法として、Na薬剤処理がある。この方法は、Naを含む劇薬にPTFEを浸漬して引き上げるだけで、接着性を劇的に改善できる。ただし、この薬剤は、作業者への身体的負担および環境負荷が大きく、廃液処理の問題が生じる。また、PTFEを変色させ、さらに、その表面は凸凹になる。そこで、我々の研究グループは、プラズマを利用し、人体にも環境にも優しく、変色も起こさない上に、PTFEの表面を凸凹にすることなく接着性を改善する技術を開発した。

社会実装に向けた将来展望

Na薬剤処理に代わる接着性改善技術として利用されることはもちろんだが、Beyond 5G対応のプリント配線板への利用も期待されている。周波数の増加に伴って一度に送信できる情報量は多くなるが、伝送損失も大きくなる。この伝送損失を小さくするためには「比誘電率と誘電正接が小さい材料(PTFE)の使用」と「金属配線と基板材料の界面粗さ低減」が必要である。開発した技術は、基板材料としてPTFEの利用を可能にし、さらに界面粗さを小さくできるため、超低伝送損失のプリント配線板を作製できる可能性を秘めている。

担当研究者

助教 大久保 雄司(工学研究科・附属精密工学研究センター)

キーワード

接着/フッ素樹脂/プラズマ/異種材料/Beyond 5G

参考URL

http://www.upst.eng.osaka-u.ac.jp/endo_lab/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2022(社会実装を目指す)より抜粋したものです。