研究

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「信頼されるAIシステム」を実現する幾何学的深層学習の構築

准教授 松原 崇(基礎工学研究科)

  • 理工情報系
  • 基礎工学研究科・基礎工学部

研究の概要

AI技術を用いたシステムやサービスが社会に広がりつつありますが、現在のAI技術には説明性や安全性などに関して様々な限界があります。私はデータの持つ性質を設計段階で保証できる「幾何学的深層学習」という技術的基盤を確立し、こうした限界を克服します。例えば、AI技術で物質の性質を高速に予測することを考えます。しかし従来のAI技術では、分子の向きや位置が変わると別の分子として扱われ、結果が一貫しません。そこで、回転や移動が結果に影響しない幾何学的対称性を深層学習に組み込みます。すると、対称性に関係する様々な物理法則が保証され、限られたデータから未知の現象を高精度に予測することが可能になります(図1)。これはAI技術と数理モデルの長所を両立させるアプローチ(図2)であり、創薬・気象予報・設計・機械制御など様々な領域で、AIシステムの高信頼化・高性能化を実現します。

図1 物理法則を保証する人工知能は未知の結晶構造を予測できる
図2 帰納的な深層学習と演繹的な数理モデルを融合した「幾何学的深層学習」

研究の先に見据えるビジョン

人間の知識や要求を満たすAIとの創造的な協業

数理モデルを構成する方程式は、常に多くのトライ・アンド・エラーで構成されてきました。しかし、そのような手続きは機械学習の方が得意であり、自動化することが可能です。幾何学的深層学習の技術的基盤が確立された暁には、「対象がどのような数式で記述されるか」という具体的な部分はAI技術によって抽象化され、「対象がどのような性質を持つか」という抽象的な部分だけが大きな意味を持ちます。これによって量的な精度の追及は機械学習に任せ、人間は対象の本質を明らかにするという、人間にしかできない創造的な仕事に集中することができるようになります。

担当研究者

准教授 松原 崇(基礎工学研究科)

キーワード

幾何学的深層学習/ベイズ的深層学習/数理モデル化/非線形システム論

応用分野

物理シミュレーション/気象予報/自動化/医療データ解析/不良品検査

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。