研究 (Research)

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細菌のタンパク質輸送機構の解明 ~Ⅲ型分泌系の細胞内機能構造の高分解能構造解析~ (The protein secretion mechanism of pathogenic bacteria ~High-resolution in situ structures of type III secretion system~)

助教 川本 晃大(蛋白質研究所) KAWAMOTO Akihiro(Institute for Protein Research)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 蛋白質研究所 (Institute for Protein Research)

研究の概要

毎年、細菌感染による食中毒が発生しています。サルモネラ属菌、ビブリオ属菌、赤痢菌、O157を含む腸管出血性大腸菌などの細菌は、III型分泌系を用いて病原因子となるタンパク質(エフェクター)を宿主細胞に送り込み、細菌感染症を引き起こすことが知られています。しかし、細胞内で起きるタンパク質間相互作用や過渡的に形成される複合体形成については、解析が難しく、構造-機能相関研究は遅れています。そこで、III型分泌系のタンパク質輸送装置の構造を明らかにすることを目指し、我々がこれまで培ってきた、ミニセル化技術(小型の細菌細胞を作製する技術。より高分解能での解析が期待できる。)とクライオ電子顕微鏡の単粒子構造解析法を組み合わせた、新規の撮影技術及び解析技術の開発を進めています(図1)。将来的に、新規抗菌薬の開発や感染症予防の進展につながることを期待しています。

図1 新規解析法による、III型分泌系の細胞内機能構造の解析

研究の先に見据えるビジョン

細菌の分泌系に直接作用する薬剤の実現

現在、細菌感染の治療には様々な抗生物質が用いられていますが、抗生物質を多用することで抗生物質に耐性を持った耐性菌が出現し、治療困難なケースが報告されています。そのため、抗生物質を使わない、新たな着眼点からの感染症治療薬の開発が求められています。III型分泌系のタンパク質輸送機構の解明によって、III型分泌系を直接ターゲットとした、抗生物質を使わない新たな着眼点からの感染症治療薬の開発に結びつくことを期待しています。また、病原性細菌にはIV型やVI型分泌系を使ってエフェクターを宿主細胞に送り込み、細菌感染症を引き起こすものもあります。我々の高分解能解析技術を応用すれば、III型分泌系のみならず、IV型やVI型分泌系のメカニズム解明や、分泌系を直接ターゲットとする薬剤開発にも大きく貢献できると考えています。

担当研究者

助教 川本 晃大(蛋白質研究所)

キーワード

III型分泌装置/クライオ電子顕微鏡/細菌感染/膜タンパク質

応用分野

創薬/人工ナノマシン

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。