研究 (Research)

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超高圧と計算科学を活用した機能性量子物質の開拓 (Exploring functional quantum materials using ultrahigh pressure and computational science)

教授 石渡 晋太郎(基礎工学研究科) ISHIWATA Shintarou(Graduate School of Engineering Science)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 基礎工学研究科・基礎工学部 (Graduate School of Engineering Science, School of Engineering Science)

研究の概要

「量子物質」とは、磁性、超伝導、量子ホール効果等の量子性が顕著な物性・機能(図1)を示す新奇物質の総称で、新たなセンサー材料・超省エネルギー材料に化ける可能性を秘めています。
我々はこれまでに、数万気圧の超高圧や強酸化雰囲気といった極限環境下で、そのような機能性量子物質の開発を進めてきました。例えば、ペロブスカイトと呼ばれる鉱物と似た構造をもつ遷移金属酸化物(図2)を超高圧下で合成し、わずかな体積変化によりスピン配列が強磁性とらせん磁性の間でスイッチするといった新しい現象(巨大磁気体積効果;図1右下)を見出しました。こうした新物質を得るには、出発原料の選択に加えて圧力や温度などの様々な合成条件を最適化する必要があります。そこで現在我々は、マテリアルズ・インフォマティクスと総称される計算・情報科学を活用し、高圧合成を活用した新物質・新機能探索のさらなる効率化に取り組んでいます。

図1 量子物質が示す様々な電子機能
図2 ペロブスカイト型酸化物の構造

研究の先に見据えるビジョン

新物質開拓が引き起こす情報社会の技術革新

自動運転や家庭用の自律型ロボットのように、多様なセンサー材料を必要とする技術のさらなる発展が望まれることから、わずかな環境(光、温度、圧力等)の変化を電気信号に変換する新材料の需要は、年々高まっています。熱電変換デバイスのようにダウンサイジングに適したエネルギー変換の高性能化も、今後さらに重要な研究課題となるでしょう。このような革新的機能を示す量子物質の開拓は、未来の情報社会の基盤を作ることにつながります。我々はこれらの革新的量子物質を効率的に開拓するべく、第一原理計算を活用した網羅的準安定相探索を活用した超高圧合成を進めています。

担当研究者

教授 石渡 晋太郎(基礎工学研究科)

キーワード

量子物質/超伝導/熱電変換/スピントロニクス/高圧合成/新物質/計算科学

応用分野

省エネ高速電子デバイス/環境調和型エネルギー変換/センサー材料

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。