研究 (Research)

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細胞内の化学状態の変調を捉える質量分析 ~イメージング技術の開発とヒト疾患への応用~ (Mass spectrometry to capture the modulation of chemical states in cells – Development of imaging techniques and their application to human diseases)

准教授 大塚 洋一(理学研究科) OTSUKA Yoichi(Graduate School of Science)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 理学研究科・理学部 (Graduate School of Science, School of Science)

研究の概要

科学的根拠に基づく病気の究明・予知・予防の高度化のためには、生命活動に伴う細胞内の化学状態の変調を詳細に捉える技術が重要です。「質量分析イメージング」は、試料に含まれる多様な成分を抽出・イオン化し、複数の化学成分の分布を一度の計測で捉える技術として期待されています。しかし高空間分解能のイメージングには、試料の微小な凹凸形状や、試料を保持するための基板の傾きによる、抽出・イオン化への影響を抑制する技術が求められていました。
そこで私たちは、独自の抽出イオン化法(t-SPESI)に、新たに開発したプローブの振動計測技術とフィードバック制御技術を組み込み(図1)、表面が平坦ではない実試料計測の安定化を図りました。それによって高精細の質量分析イメージングと表面形状イメージングの同時計測を実現し、ヒト心臓疾患組織中の脂質成分群の多様な分布形態の可視化にも成功しています。

図1 タッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法(t-SPESI)の模式図
図2 t-SPESI によるヒト心臓疾患組織の質量分析イメージング

研究の先に見据えるビジョン

疾病情報の可視化による適切な早期治療の実現

生体組織切片に前処理を施すことなく、高空間分解能でイメージングする本技術は、疾患組織の多彩な化学情報の可視化に有効です。今後はヒト疾患組織を対象として、多次元化学分布情報計測と特徴量の抽出法の研究を進めることで、病態解明への貢献や診断技術への応用、更には適切な早期治療の実現につなげていきたいと考えています。

質量分析イメージングによる疾病情報の可視化と医療への応用

担当研究者

准教授 大塚 洋一(理学研究科)

キーワード

質量分析イメージング/タッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法(t-SPESI)

応用分野

多次元化学分布情報計測と特徴量の抽出法/病態解明/診断技術

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。