研究

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脳とこころの仕組みの解明に挑む ~FASTによるマルチスケール脳解析~

准教授 笠井 淳司(薬学研究科)

  • 医歯薬生命系
  • 薬学研究科・薬学部

研究の概要

精神疾患の患者数は年々増加していますが、現状では有効な治療法が少なく患者の治療満足度は高くありません。一方、大手製薬企業は精神疾患研究から撤退しており、新たな治療法の開発研究の推進が強く求められます。
こうした背景のもと、我々は脳全体を高速・高精細に観察するイメージング装置(FAST)を開発してきました。げっ歯類脳の神経細胞、神経回路、脳領野などのレベルから霊長類脳まで、マルチスケール脳解析(図1)を可能とするFASTを用いて、様々な精神疾患モデル脳の解析に取り組んでいます。一連の研究を進める中で、マウス脳の活動の網羅的解析により、ストレスによって生じる不安を制御する小数の細胞集団を発見しました。この成果が、ストレスが関与する精神疾患(不安障害やうつ病等)の発症機序解明や治療法開発につながることを期待します。

図1 マルチスケールな視点から脳を解析するツールを開発/確立

研究の先に見据えるビジョン

融合研究による精神疾患治療のイノベーション

私の専門分野は薬理学ですが、上述の通り、イメージング開発など、種々の異分野融合研究を推進し、新しい技術を開発してきました。そうした経験や技術を活かし、創発的研究支援事業においては、対症療法しか選択肢がない発達障害治療において、特に自閉スペクトラム症(ASD)の胎児医療を実現するための道筋を示し、根本的な治療(原因療法)を可能にするための研究に取り組んでいます。この研究は、精神疾患治療のイノベーションを目指すものです。例えば、ASD児童の水難事故は正常児の160倍にもなりますが、ASDの治療法開発は、そのような非感染症による早期死亡を減らすことを始め、QOLの向上や障害調整生命年を指標にした社会負担の軽減にも貢献できると考えています。

担当研究者

准教授 笠井 淳司(薬学研究科)

キーワード

脳情報動態/マルチスケール脳/精神疾患/イメージング技術

応用分野

精神疾患治療/原因療法/創薬

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。