研究 (Research)

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経肺圧(Lung stress)の可視化で挑むARDSの個別化医療 (Personalised medicine for ARDS challenged by visualisation of Lung stress)

准教授 吉田 健史(医学系研究科) YOSHIDA Takeshi(Graduate School of Medicine)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))

研究の概要

ARDS(急性呼吸促迫症候群)は、新型コロナウイルス肺炎を含む重症肺炎などから発症しますが、約20年間その院内死亡率は低下していません。どのような病態・肺形態であれ、人工呼吸器関連肺傷害リスクを評価せずに画一的人工呼吸管理が行われてきたためです。そこで我々は、食道内圧データを用いる肺生理学と、肺CT画像データを用いる画像解析学との融合による斬新なアプローチで、全肺領域に存在するLung stressの膨大な情報を小領域に分けて可視化させる技術- Lung stress mappingの確立に取り組んでいます(図1)。これを使えば、肺傷害リスク領域の「量」及び「部位・パターン」を評価・可視化できるようになります(図2)。さらに人工知能を用いて、肺傷害リスク領域の評価から予後予測を行うことで、リスク大の患者群を抽出し、「先制的」個別化医療の提供を可能にします。

図1 Lung stress mappingによる肺障害リスク領域の可視化(高いlung stress-経肺圧が人工呼吸器関連肺傷害を引き起こす)
図2 肺傷害リスク領域の「部位・パターン」「量」評価からの個別化医療の提供)

研究の先に見据えるビジョン

人工呼吸管理を24時間365日自動で最適化

人工呼吸器関連肺傷害リスク領域の「部位・パターン」「量」を評価できるLung stress mappingは、様々な個別化医療と組み合わせることが可能であり、我々の予想をはるかに超える「爆発的」・「破壊的」な効果を生み出すと思われます。
その一つとして、Lung stress mappingを搭載した次世代型人工呼吸器は、リスク領域自動軽減システムにより患者に提供する換気条件を24時間365日自動で最適化することで、「いつでも」「どこでも」「だれでも」個別化医療の提供が可能となります。「人工呼吸器管理は経験に基づく熟練の技」という既成概念を破壊し、ARDS治療成績向上の革新的なブレイクスルーとなることが期待できます。

担当研究者

准教授 吉田 健史(医学系研究科)

キーワード

ARDS/急性呼吸不全/人工呼吸管理/Lung stress/肺傷害

応用分野

人工呼吸器の開発/個別化医療

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。