研究 (Research)
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AIに負けない人間精神の創造性探究 ~発想/問題発見の思考ツール「記憶術」の再検討~ (Exploring the creativity of the human spirit to defeat AI – Revisiting the art of memory, a thinking tool for ideas/problem finding)
教授 桑木野 幸司(人文学研究科) KUWAKINO Kouji(Graduate School of Humanities)
研究の概要
近年注目を集めている問いの1つに「AIは創造性を持ちうるか」があります。この問題に従来とは異なる視点から示唆を与えてくれるのが、人類が過去に開発してきた思考ツールの分析です。なかでも興味深いのは、現代とも類比しうる情報爆発・メディア革命の渦中にあった西欧の初期近代(15-17世紀初頭)に高度に発展した「記憶術」という、仮想アーカイヴの構築メソッドです。PCを用いずに膨大な情報を脳内で効率的に処理しつつ、データ間の新規組み合わせを促進し、知の創発を可能とする様々な工夫の集大成と言えます(図1)。古代ギリシヤ・ローマに端を発するこの「記憶術」の歴史をまとめた『記憶術全史:ムネモシュネの饗宴』(2018)は、私の研究成果の一例です。先人の思考のためのメソッドを現代的視点から再検討することは、AIに負けない人間精神の創造性を涵養するうえで貴重な提言をもたらすはずだと考えています。
研究の先に見据えるビジョン
歴史的観点でイノヴェーションの意義を考察・提言
科学技術基本法が今年6月に改正され、社会の諸課題を理解・解決するためには、自然科学との連携・協創を含む人文科学の積極的役割が重要であるという方向性が改めて示されました。私は、まさに文・理が交差する「記憶」をキーワードとした新たな学問領域をひとつの舞台に、研究を進めています。初期近代の頃までは、現代のような細かな学問間の壁が無く、人文学は人知の全体を見渡す知性の涵養を担っていました。先端分野におけるイノヴェーションの意義を正しく見極め、その発見が人類社会の未来にどのような意味をもちうるのかを、歴史的パースペクティヴに基づいて考察し、提言を行ってゆく。それこそが今後の人文科学に求められる役割だと思います。
担当研究者
教授 桑木野 幸司(人文学研究科)
※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2023/OURG-01-02/
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/75igyh/
キーワード
記憶術/仮想アーカイヴ/創造性/史学
応用分野
AI/教育学/VR/AR技術/医療/都市計画