研究 (Research)

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価格競争がもたらす価格差別の抑制 ~個人情報を活用した企業の価格付けの理論分析~ (Reducing price discrimination caused by price competition – Theoretical analysis of firms’ pricing using personal information)

教授 松島 法明(社会経済研究所) MATSUSHIMA Noriaki(Institute of Social and Economic Research)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 社会経済研究所 (Institute of Social and Economic Research)

研究の概要

情報技術の進展によって、小売店をはじめとする最終消費者に製品を販売する企業は、購買履歴など顧客の個人情報を活用した価格設定が容易になり、販売促進活動が活発化しています。他方、支払意欲の高い特定の顧客に対して非常に高い価格が設定される状況は、価格競争がもたらす価格差別であり、経済厚生の面で問題です。

このような意識の下、私は、個人情報を活用した企業の価格付けの理論分析に取り組んでいます。具体的な研究成果例は、企業が購買履歴を用いてターゲットセグメント毎に価格設定を行うモデルです(図1)。また、消費者が企業の価格差別の試みを回避するためには、消費者自身による個人情報管理が鍵となることも明らかにしました。

2020年4月から公正取引委員会競争政策研究センターの所長を務めていることもあり、こうした学術知を少しでも経済政策に還元していくことが今後の課題です。

図1 購買履歴を用いた価格差別:企業は、新規顧客に対しては他社の顧客を奪うため安い値段を提示し、値段に関わらずサービスを使い続ける顧客に対しては高い値段を提示する

研究の先に見据えるビジョン

変容する市場の競争政策に経済学の知見活用

情報通信技術の進展により、従来は困難であった各経済主体のつながりや取引が生まれ経済活動の範囲が広がって、市場が活性化しています。他方、各種の取引をつなぐ「場」として活動するタイプの企業が台頭し、市場の寡占化も進んでいます。このような、一見したところ情報通信技術によって大きな変革を生み出している企業であっても、この企業を取り巻く利害関係者の相互依存関係を経済学の考え方に従って整理してみると、従来から存在する市場の一企業として見なすことができます。経済学の観点から市場構造を整理することで、政策実務や異分野での蓄積を援用するための参考材料を提供し、市場の変容に応じた競争政策に貢献していきたいと考えています。

担当研究者

教授 松島 法明(社会経済研究所)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/qydpy6/

キーワード

経済理論分析/企業間競争/価格差別/企業による個人情報利用/経済厚生

応用分野

競争政策/個人情報保護政策

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。