研究 (Research)

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より多くの有権者の投票参加を促すには ~投票率向上政策設計のためのエビデンス提供~ (How to encourage more voters to participate in the polls – Providing evidence for the design of turnout-enhancing policies)

教授 松林 哲也(国際公共政策研究科) MATSUBAYASHI Tetsuya(Osaka School of International Public Policy)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 国際公共政策研究科 (Osaka School of International Public Policy)

研究の概要

「投票率低下を食い止め、より多くの有権者の投票参加を促す制度設計とはどのようなものか」。これまで多くの研究がさまざまな国のデータを用いてこの問いに答えようとしてきましたが、確定的な結論は出ておらず、エビデンスの蓄積も十分とは言えません。

私は、主に日本とアメリカを対象に、計量経済学的手法を用いてこの問いに取り組み、投票率向上のための政策設計に欠かせない質の高いエビデンス提供を目指しています。例えば、日本における有権者1万人あたりの投票所の数(図1、1960年代以降減少傾向)や開閉時間を見直すだけでも衆院選投票率が上昇する可能性を明らかにしました。別の研究では、期日前投票制度で有権者の一部が投票のタイミングをずらせたため、2017年衆院選が台風と重なっても投票率が大きく下がらなかったという、期日前投票制度の有効性に関するエビデンスを提示しました(図2) 。

図1 有権者1万人あたりの投票所数
図2 選挙当日雨量と投票率の関係(雨量が増えてもそれほど投票率は低下しない)

研究の先に見据えるビジョン

「平等な」社会実現のための制度設計への貢献

選挙での投票は最も身近な政治参加の形態ですが、近年の日本の選挙投票率は低下傾向にあります。低投票率は、規範的観点のみならず、政治的・経済的平等や公平の観点からも重要な問題で、実態の理解と有効な介入策が不可欠です。投票率は性別より所得や教育の影響を大きく受けます。「投票する権利があるから平等」ではなく、社会の構造的不平等が投票率低下をもたらすのです。投票行動に関する重要なエビデンスを解釈しやすい形で提供し、時間や手間等の投票のコストを下げ、誰もが平等に投票できる制度の実現への貢献を目指します。また今後は、選挙制度に限らず、平等な社会実現のための制度設計へのエビデンス提供にも挑戦していきたいです。

担当研究者

教授 松林 哲也(国際公共政策研究科)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/6j9pxn/

キーワード

政治行動論/政治代表論/計量経済学/エビデンス/投票率/投票制度/投票環境

応用分野

EBPM/選挙・投票に関する制度・政策設計

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。