研究 (Research)
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自発光植物 ー電力不要の代替照明に資する基盤技術ー
教授 永井 健治(産業科学研究所 生体分子機能科学研究分野)
研究の概要
地球温暖化対策として、二酸化炭素の排出を伴う火力発電を大規模に抑制すると共に、電力を利用しない機器に置き換えていく戦略が挙げられる。そこで、ホタルのような発光生物が持つ化学反応により発光するシステムに着目した。我々が開発した技術シーズである世界一明るい赤、緑、橙、黄、青の発光タンパク質の遺伝子を植物に導入して作出される電力に依存せずに様々な色に「光る植物」を、建築物の壁面緑化や観葉植物に応用し、屋外照明、屋内照明として市街地、テーマパーク、インテリアに世界初の緑のイルミネーションとして実装することを目指す。また、将来的には電力供給法を二酸化炭素非排出型に転換していくことに加え、電力そのものの消費を減少させる施策、例えば家庭や工場などでの低消費電力化の取り組みを地球規模で推進することも期待される。
研究の背景と結果
地球温暖化、温室効果ガス削減など環境ビジネスは、メガソーラー発電や蓄電システムなどの再生可能エネルギー利用やLED照明、節電製品などの省エネ対応を中心に実行され、近年比較的国民にとって身近なものになりつつあるが、一定規模の普及が進み、また温室効果ガス削減に対する効果の規模が大きく貢献を実感することは難しい。一方、花や樹木、緑化植物は古くから日常生活に完全に溶け込み、身近な存在となっている。ホタルに代表される発光生物は、キノコ等の菌類、微生物、深海生物等がその自発光機能を持っているが、自然植物では知られていない。バイオテクノロジー、遺伝子工学の発展で、発光機能が解明されて自発光植物の研究に取り組んでいるものの、高輝度、多色、昼夜通したCO2吸収機能を複合的に持った実用化可能な発光植物は未だない。我々は蛍光タンパク質と発光タンパク質(ルシフェラーゼ)の融合によって高効率な発光を可能にし、種々の高光度発光タンパク質「ナノランタン」を開発することに成功している。発光タンパク質を遺伝子組み換えによりゲノムに導入した3色に光るゼニコケ(自発光ではなく基質の外部供給を必要とする)や花(ペチュニア、シクラメン)の開発に世界で初めて成功しただけでなく、糸状菌の発光タンパク質とルシフェリン生合成経路に係る遺伝子を同定し、ポリシストロニックベクターを開発して植物に導入することにより自発光タバコの作出にも成功した(図2)。
研究の意義と将来展望
今後、発光植物が実用化されれば、観賞用花卉類や観葉植物としての需要が想定され、さらには、シバなどの植物を利用して都会における壁面発光緑化パネルの開発やポプラやプラタナスなどの樹木を利用した光る街路樹の開発も期待される。世界の発電の7割弱が二酸化炭素を排出する火力発電であり、また発電した電力の15%が照明に用いられていることから、その照明を自発光植物で代替できれば、火力発電の量を減らし、結果として二酸化炭素の排出を減らす結果、地球自体のサステイナビリティにつながることも期待される。
担当研究者
教授 永井 健治(産業科学研究所 生体分子機能科学研究分野)
※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2016/u8rq1b/
キーワード
発光/検査/スマートフォン/ビリルビン/トロンビン
応用分野
医療・ヘルスケア/創薬/診断