研究 (Research)

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気候変動に適応するためのインフラストラクチャー改革と市民参加 (Infrastructure reform and citizen participation in adapting to climate change)

教授 森田 敦郎(人間科学研究科) MORITA Atsuro(Graduate School of Human Sciences)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 人間科学研究科・人間科学部 (Graduate School of Human Sciences, School of Human Sciences)

研究の概要

気候変動が急激に進む中、社会のあり方に抜本的な改革が迫られています。国連は、壊滅的な気候変動を避けるためには、2050年までにCO2排出をゼロにする必要性があると指摘しています。その実現には、農業、産業、移動と運輸、消費生活の全てを作り変えなければなりませんが、各国政府の取組は苦戦中です。

そこで我々は、政府とは別のアプローチで気候変動への適応を図る市民運動に着目しました(図1)。資源リサイクル、再生エネルギー生産、ローカル流通プラットフォーム等のインフラ改革運動のネットワーク化により、各地域で形成される環境や人々との身体的・情動的な関係が、惑星規模の環境プロセスにどう結びつくか、フィールドワークとデジタル人類学を組み合わせた手法で解明したいと考えています。現状の環境政治の批判的分析にとどまらず、持続可能な世界の移行への積極的貢献を目指します。

図1 日本と欧州における経済のローカル化のための運動と、インド、南米、カナダにおける先住民運動が、科学技術とデータの流通によって結びついたネットワークに焦点

研究の先に見据えるビジョン

「ひとつの惑星に多くの世界」がある循環経済社会

我々が着目する草の根の社会運動は、膨大なCO2を排出する現在のグローバルなインフラをローカルで環境負荷の小さなものに変えることで、気候変動に立ち向かおうとしています。また、デジタル技術を利用してグローバルに連携すると同時に、自らそのインフラを作り出し、特定の場所に根ざした自律性の獲得を目指しています。CO2などの物質循環を惑星レベルで管理しようとする「地球システム・ガバナンス」とは異なるこうした試みは、現在のひとつのグローバル社会が終焉し、分散した多数のローカル社会へと移行する未来を想起させます。「ひとつの惑星と多くの世界」の問題に対し人文社会科学者がどのように関わっていけるのか、今後も模索を続けます。

担当研究者

教授 森田 敦郎(人間科学研究科)

キーワード

気候変動/持続可能性/市民参加/インフラストラクチャー/ローカライゼーション運動

応用分野

環境政治/循環経済

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。