金属タンパク質を基盤とする人工酵素や人工光捕集系の開発 (Development of artificial enzymes and artificial light-harvesting systems based on metalloproteins)

研究の概要

持続可能な社会の実現において、高機能な生体高分子であるタンパク質の利用は欠かせません。我々の研究グループは、金属タンパク質、特にヘムタンパク質の化学的な改変により、革新的な触媒活性を示す人工酵素や太陽光を効率的に利用できる人工光合成系の開発およびタンパク質を基盤とする生体適合材料の開拓を目指しています。

具体的には、ヘムタンパク質のヘム（鉄ポルフィリン錯体）を適切な人工金属錯体に置換することで、アルカン類の水酸化等の難易度の高い反応に活性を示す人工金属酵素の開発に世界に先駆けて成功しました（図1）。また、集合化したヘムタンパク質を利用し、光増感色素を集積化することで、ヘムタンパク質が効率の良い人工光合成に不可欠な人工光捕集系として機能することを明らかにしました（図2）。これらは低環境負荷で高難度反応に対する触媒や、人工光合成技術の実用化に寄与すると期待されます。

研究の先に見据えるビジョン

人工光合成システム構築でエネルギー問題に貢献

ヘムタンパク質は、ヘム分子の多様な反応性に由来して、様々な機能性を発揮することから、新規触媒やバイオマテリアルの創製が期待されている物質です。我々が独自に開発した化学的改変は、非天然要素をタンパク質に導入する挑戦的な手法であり、今後も分野を開拓するポテンシャルを有しています。

我々の化学的アプローチにより得られるヘムタンパク質の高次光捕集系は、その調製の簡便さや汎用性の高さから、生体の天然構造にインスパイアされた革新的な人工光合成システム構築手法として期待できます。さらに独自の触媒系と組み合わせることで、昨今の世界的なエネルギー問題解決に大きく貢献できると考えています。

担当研究者

准教授　大洞 光司（工学研究科）

キーワード

ヘムタンパク質／ポルフィリン／人工酵素／人工光捕集系

応用分野

天然炭素資源の有効利用／人工光合成／機能性材料

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。