研究

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瞬きは「脳・心・社会」を映す鏡 ~瞬きの認知的・社会的機能とその社会応用~

教授 中野 珠実(情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター)

  • 全学・学際など
  • 大阪大学・情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター

研究の概要

コロナ禍の影響により、テレビ会議やオンライン授業などの機会が増え、対面と比べてコミュニケーションの質の低下が問題となっています。我々の研究により、無意識に行っている目の「瞬き」が、この問題解決へのヒントをもつことがわかってきました。

我々は、映像視聴時の人々の瞬きのタイミングの同期度を調べることで、映像に対する関心度の推定が可能であることを発見しました。興味深いことに、会話において話者と聞き手の瞬きも同期して発生しており、瞬きを介して他者と無意識に話の切れ目を共有し、相互理解や共感性を高めている可能性が考えられます。一方、瞬きのたびに脳の主要なネットワークの活動がリセットされることも明らかになりました(図1)。瞬きは、注意の切れ目で脳や身体の活動状態をリセットさせる役割や、コミュニケーションを円滑にするという社会的な役割をもつことが示唆されます。

図1 瞬きに応じて活動が変化する脳領域
上段:瞬きに伴って活動が上昇した脳領域。安静時や内省をしているときなど内的な情報処理に関わる部位
下段:瞬きに伴って活動が減少した脳領域。自発的に外界に目を向ける注意の神経ネットワーク部位

研究の先に見据えるビジョン

瞬きの同期現象による感性評価とその社会応用

現在我々は、瞬き同期現象を利用して、社会実装を目指した研究も行っています。例えば映像や話題への人間の関心度を推定する「質的視聴率」システムや、映像に対する瞬き発生率を推定する人工知能による、人間の感性に基づくハイライトシーンの自動抽出システムの開発にも成功しました。また自然環境の中から「出来事のまとまり」を推定・表出することで、コミュニケーションの「間」を理解できる人工知能システムの開発も進行中です。今後は、人々の興味がどこにあるのかを的確に推測するシステムや、「空気が読める」ロボットの開発など、コロナ新時代により有用となるような社会応用に積極的に取り組んでいきたいと思います。

担当研究者

教授 中野 珠実(情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2014/201409_01/

キーワード

認知神経科学/自律神経/社会性/自閉症/コミュニケーション/注意

応用分野

「空気が読める」ロボット/関心度や快適空間の推定/映像のハイライトシーンの自動抽出

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。